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声明・総会決議
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声明・総会決議
テロ等組織犯罪準備罪の新設に反対する会長声明
政府は、過去3度廃案となった共謀罪創設規定を含む法案について、「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めたうえで、これを新設する組織犯罪処罰法改正案(以下「新法案」という。)を来年の通常国会に提出する方針であるとの報道がなされている。
当会は、共謀罪は外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するばかりか、表現行為を処罰する点で表現の自由や思想信条の自由等基本的人権を侵害するものであることなどから、過去2度(2006年1月20日、2014年10月11日)共謀罪創設に反対する会長声明を出している。
現在報道されている新法案では、犯罪の「遂行2人以上で計画した者」を処罰することとしている。しかし、「計画」とは「犯罪の合意」と同義であり、その法的性質は「共謀」と何ら変わることはない。また、新法案では、「犯罪の実行の準備行為」を新たな要件として付加している。しかし、資金の準備等といった予備罪・準備罪における予備行為・準備行為より前段階の危険性の乏しい行為を広範に含む可能性があり、極めて抽象的で恣意的な解釈が可能であって、処罰範囲を限定するような機能を有しておらず共謀罪の危険性は変わることはない。
また、新法案では、適用対象を単に「団体」ではなく「組織的犯罪集団」とし、その定義を「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」としている。しかし、そのような「組織的犯罪集団」を明確に定義することは困難であり、その解釈によっては適用対象が拡大する危険性が高い。犯罪を計画すれば犯罪の実行がその団体の目的であると解釈することも可能であり、適用対象の限定はないことになる。
さらに、新法案は、これまでの共謀罪法案と同様にその対象となる「犯罪」を長期4年以上の懲役・禁錮刑が定められている罪について一律に定め、現時点では対象となる「犯罪」は600以上にもわたる。その範囲は非常に広範にわたることになり、表現の自由等を侵害する危険性は何ら変わることはない。
そのうえ、新法案によっても、その「準備行為」の捜査のためには、さらなる通信傍受の拡大や、捜査機関による会話傍受が導入される事態が予想される。その結果、捜査機関が個人の会話や電話、メールなどの日常的なやりとりを常時監視することとなり、市民の表現活動を萎縮させてしまう懸念が消え去ることはない。
政府は、新法案の新設は国連越境組織犯罪防止条約(以下「条約」という。)を締結するための国内法の整備としている。しかし、現行法上でも、重大犯罪について予備罪、共謀罪が存在しているし、判例上も共謀共同正犯理論が確立していて、その是非は格別としても、予備の共謀共同正犯、他人のための予備についても処罰が可能であり、条約を締結するために新法案の制定は不可欠なものではない。
また、テロ対策の必要性は認めるものの、そもそも条約は経済的な組織犯罪を対象とするものであり、テロ対策とは無関係である。新法案の対象行為である600以上の犯罪にはテロとは全く関係ない犯罪も含まれている。
したがって、テロ等組織犯罪準備罪は、共謀罪の問題点が解消されておらず、その本質は共謀罪と何ら変わらないことから、基本的人権を侵害する危険性が高く、その新設には強く反対する。
2016年10月1日
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会長
松本成輔
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