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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

特定商取引法に事前拒否者への勧誘を禁止する制度の導入を求める意見書

第1 意見の趣旨

 特定商取引に関する法律(以下、「特定商取引法」という。)に、予め訪問勧誘や電話勧誘を受けたくない旨の意思を示した消費者に対して、事業者がそれらの勧誘を行うことを禁止する制度(事前拒否者への勧誘禁止制度)を速やかに導入することを求める。

第2 意見の理由

  1.  現在、内閣府消費者委員会特定商取引法専門調査会において、特定商取引法の改正が検討されている。
     現行の特定商取引法は、いったん勧誘を受けてから具体的な拒絶の意思を示した者に対する再度の勧誘を禁じているが、訪問販売や電話勧誘販売の勧誘を受けることを事前に包括的に拒否する制度は設けていない。
     しかし、一度訪問や電話による勧誘を受けてしまうと、巧みな話術や不当な勧誘行為によって、消費者が不本意な契約や不当又は不正な契約を締結してしまう危険は避けられない。
  2.  全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録された相談件数によれば、「家庭訪問」による訪問販売や電話勧誘販売の相談は近年増加しており、こうした不意打ち的な販売行為によるトラブルは後を絶たない状態である。特に、判断能力や断る力が低下する60歳以上の高齢者の相談件数が、訪問販売では約53.6%を占め、電話勧誘販売では約70.8%を占めている。
     また、平成27年5月の消費者庁の調査によると、消費者の96%以上が訪問勧誘、電話勧誘を「全く受けたくない」と回答している。
     このような事実からは、高齢者をはじめとする多数の消費者が、望まない訪問勧誘や電話勧誘によって無用なトラブルに巻き込まれていることは明らかであり、早急な対策が必要である。
  3.  そして、このような問題を解決するためには、事前に勧誘を望まない旨の意思を示した消費者に対する勧誘を禁止する制度を設けるべきである。
     具体的には、勧誘を望まない消費者が、予め電話番号を登録し、登録者への電話勧誘を禁止する制度(Do-Not-Call制度)や、訪問販売を望まない消費者が門戸に「訪問販売お断り」を意味するステッカー等を掲示した場合に、掲示者への訪問勧誘を禁止する制度(Do-Not-Knock制度)を導入し、事業者がこれらの制度による禁止行為に違反して勧誘を行った場合には、当該事業者に行政処分や罰則を適用するほか、消費者は当該勧誘により締結された契約を取り消すことができるようにすべきである。
  4.  このような事前拒否者への勧誘を禁止する制度に対しては、営業の自由を害するものであるとの意見もある。
     しかしながら、勧誘を受けるか否かは消費者の自己決定に委ねられるべきものであり、営業行為は、勧誘を受けたくないと拒否の意思を示している消費者の意思に反してまで認められるものではない。消費者基本計画(平成27年3月24日閣議決定)においても、勧誘を受けるかどうかは、消費者の自己決定権の下に位置づけられるとされており、消費者の意思は最大限に尊重されるべきである。
  5.  以上の理由により、当会は、意見の趣旨のとおり、事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求めるものである。

2015年11月14日

山梨県弁護士会
会長 
關本 喜文