ページの先頭です

山梨県弁護士会について

声明・総会決議

安全保障法制改定法案に反対する会長声明

 政府は、平成27年5月15日、自衛隊法、重要影響事態安全確保法、事態対処法など10本の法律の一部改正を行う、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」(平和安全法制整備法)案と、「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法)案を、第189回国会に提出した(以下併せて「本法案」という)。
 本法案は、4月27日にアメリカと合意した新たな日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)を反映し、我が国及び国際社会の平和及び安全のための切れ目のない体制の整備を行うことを目的とする。
 しかしながら、本法案は、憲法第9条に反し、違憲無効なものである。
 本法案は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる等の要件を満たす事態を「存立危機事態」と称し、この場合に、世界のどこででも自衛隊が米国及び他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。これは、集団的自衛権の行使を容認するものである。
 また、本法案によれば、我が国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、地理的限定なく、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、自衛隊が戦争を行っている米国及び他国軍隊に、弾薬の提供等まで含む支援活動を行うことを可能としている。これは、従前禁止されてきた他国との武力行使の一体化をもたらすものである。
 政府は、日米両政府が軍事的に協力することによって抑止力が高まり、我が国及び国際社会の平和と安全をもたらすことができるとするが、日本国憲法が目指す恒久の平和は日本国民が平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して達成されるものである(憲法前文)。
 そもそも、主権者である国民は、権力者による権力濫用から、基本的人権を守るために憲法を制定した(立憲主義)。憲法は権力者を縛るものであり(憲法第99条)、憲法に反する権力行使は許されない(憲法前文、憲法第98条)。戦争は、最大の人権侵害であり、日本国民は、憲法第9条によって、政府による武力の行使を禁止し、戦力の不保持、交戦権を否認したものである。
 しかし、本法案は、集団的自衛権を認め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合に、自衛隊による武力行使を認め、他国との武力行使の一体化をもたらす後方支援を地理的限定なく認める。これらの行為は、我が国に対する攻撃(本法案にいう武力攻撃事態等にほかならない)を招くものである。本法案は、これまで憲法第9条によって守られてきた我が国の平和と人権を破壊し、戦争に導くものにほかならない。
このほかにも本法案には様々な問題があるが、平成26年7月1日の集団的自衛権行使容認を行った閣議決定に基づくものにほかならず、憲法改正手続を踏むことなく憲法の実質的改正をしようとするもので立憲主義の基本理念に真っ向から反する。
 よって、当会は、本法案による安全保障法制の改定に強く反対するとともに、基本的人権の擁護を使命とする法律家の団体として、本法案が成立することのないよう、その違憲性を強く訴えるものである。

2015年5月22日

山梨県弁護士会
会長 
關本喜文