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声明・総会決議
共謀罪の新設に改めて反対する会長声明
- 共謀罪に関する法案が(以下「法案」という。)過去3度廃案となり本年の臨時国会への提出も見送られたことが報道されているが、共謀罪の新設の検討は否定されていない。当会は2006年1月20日、共謀罪の新設が国民の基本的人権に対して重大な影響を与えることを指摘し、これに反対する会長声明を表明した。
- 共謀罪は、2人以上の者が団体の活動として犯罪を行うことを話し合って合意することを処罰対象とする犯罪である。共謀罪は犯罪実行行為や犯罪準備行為も不要とする犯罪であり、外形的行為のない意思は処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するだけではなく、表現行為を処罰する点で表現の自由、集会結社の自由、思想信条等の自由等の憲法上保障される基本的人権に対する侵害になりかねない。
法案で、共謀罪は対象犯罪や団体に関して何ら限定をしておらず、目的による限定もされていない。そのため、共謀罪は長期4年以上の犯罪には全て適用されることになるので、窃盗・傷害等600以上もの犯罪に共謀罪が適用されることになり、その範囲は非常に広範にわたることになる。
- 共謀罪の新設は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」を批准するための国内法の整備のためと説明されている。しかし、現行法上、重大犯罪について予備罪、陰謀罪が存在するうえ、判例上共謀共同正犯理論により、予備罪の共謀共同正犯、他人の予備についても処罰が可能となっている。同条約を締結した諸外国で共謀罪を新設したのはノルウェーとスウェーデンがあげられるのみであり、600以上の共謀罪を新設した国は確認されていない。したがって、条約の批准に共謀罪の新設は不可欠ではなく、我が国において共謀罪を新設する必要性は存在しない。
- 共謀罪の捜査は具体的な法益侵害行為を対象とするのではなく、会話や電話等の表現行為を対象とするものである。法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会は、2014年7月9日、通信傍受の対象犯罪を拡大する方向で最終とりまとめを行った。
このような状況では、共謀罪摘発のために捜査機関が市民の表現行為を傍受する監視社会をもたらす危険性を孕んでいる。
- 以上のように、共謀罪は刑事法体系の基本原則に反し、表現の自由や思想信条の自由等重要な基本的人権を侵害するものであるから、当会は共謀罪の新設に強く反対する。
2014年10月11日
山梨県弁護士会
会長 小野 正毅