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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

司法試験合格者数の大幅な減少を求める総会決議

第1 決議の趣旨 
 当会は、政府に対し、年間司法試験合格者数の大幅な減少を平成26年度から実施することを求める。

第2 決議の理由 

  1.  政府は、平成25年7月16日付け法曹養成制度関係閣僚会議決定「法曹養成制度改革の推進について」において、今後の法曹人口の在り方について、「閣僚会議の下で、法曹人口についての必要な調査を行い、その結果を2年以内に公表する。また、その後も継続的に調査を実施する」ことを明らかにした。そして、平成25年度の司法試験合格者数は、昨年度と変わりがなく、2000人を超えた。
     しかし、以下の状況に鑑みれば、法曹人口の在り方に関する結論を2年間も先送りすることは、司法制度そのものの崩壊を招来することになりかねない。
  2.  法曹人口は、司法制度改革審議会意見書(平成13年6月12日)において提言されていた裁判官、検察官の大幅な増員が、もっぱら予算上の理由で抑制されている中、弁護士人口のみが急増している。すなわち、弁護士全登録者数は、平成14年度の1万9508人から平成24年度には3万3624人へと1万4000人以上増加し、山梨県弁護士会の会員数も、平成14年度の58人から平成24年度には107人へとほぼ倍増している(各年度3月31日現在)。
     他方で、弁護士需要の主たる指針となる裁判所の事件数は、弁護士数の急増にもかかわらず減少の一途である。すなわち、最高裁判所の司法統計によれば、平成14年度の民事・行政事件の全裁判所新受件数と平成24年度のそれを比較すると、実に51.7%に減少し(329万8354件から170万7568件)、甲府地方裁判所および同管区内の簡易裁判所の民事・行政事件の新受件数も、49.6%にまで減少している(1万6154件から8015件)。
     司法制度改革審議会が予想した弁護士に対する需要拡大が現実化していない状況が長期間続く中で、現状の2000人強の合格者数では弁護士がますます供給過多となり、次項に述べるように就職難が発生し、OJT不足による質の低下が懸念される。
  3.  すなわち、いわゆる二回試験合格発表後の一括登録時における未登録者数は、年々増加し、平成25年度(新66期・平成25年12月19日一括登録日現在)は、570人(ただし平成26年1月14日現在の未登録者数は351人)に達し、新規登録弁護士の就職難が社会問題化していることは、周知の事実である。既存の法律事務所における研鑽の機会すらない新人弁護士が急増すると、国民の基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命とする弁護士の職責を充分に果たすことができない者が生ずることを否定できないところ、その不利益を被るのは弁護士ではなく、当該弁護士を依頼した市民自体である。
  4.  さらに、法科大学院入学志望者数は、創設時の2割以下にまで激減している。これは、法科大学院を法曹養成制度の中核とする制度の趣旨からすれば、一刻の猶予も許されない極めて深刻な事態である。法科大学院入学志望者激減の理由は、法曹資格取得後の就職や開業に十分な見通しを立てることができない実情が明らかになったためであるが、このような状況が今後も続く限り、将来法曹を担うべき有為な人材が集まらなくなり、司法が機能しなくなる可能性も否定できない。
  5.  よって、当会は、政府に対し、年間司法試験合格者数の大幅な減少を平成26年度から実施することを求める。

2014年2月28日

山梨県弁護士会