声明・総会決議
民法(債権法)改正に関するパブリックコメントを再度募集することを求める会長声明
- 法務省法制審議会民法(債権関係)部会のwebサイトによれば、第74回会議(平成25年7月16日開催)「第3ステージのスケジュール等について」において、(1)第3ステージでは要綱案の取りまとめを行うこと,(2)その取りまとめは,平成27年2月頃に法制審議会の答申をすることが可能な時期までに行うこと,(3)要綱案の取りまとめに先立ち,平成26年7月末までに「要綱仮案」の取りまとめを行うこと、とされた。
- 当会では、平成23年5月の総会決議において、民法(債権関係)改正に対して、(1)法制審議会民法(債権関係)部会の委員等の選任手続が不公正である、(2)比較法的関心に基づく学説的見地等からの改正であり、改正を基礎付ける立法事実がない、(3)多条文化が予想され複雑化し、わかりやすい民法に逆行する、などの理由から、「東日本大震災の復興が実現するまで完全なる凍結を行い、復興後の平時の環境において広く民意の反映される体制のもとで、改めて審議を行うことを強く求める。」との決議を表明した。また、中間試案に対するパブリックコメントにおいても、同様の意見を述べた。
- しかるに、原発放射能汚染の継続・拡大と避難の長期化による被害の拡大など、震災に関わる多様な法的問題が続出している中で、民法(債権関係)部会による民法改正作業は進行し、前記1のスケジュールによれば、今後は、パブリックコメントを再度募集する予定はないまま、短期間で、要綱仮案に続けて要綱案の取りまとめを行うこととされている。
言うまでもなく、民法は、国民の生活活動の基本的なルールを定める基本法であり、判例や通説が形成されてきた中で、120年を超える法的安定性を有している。それにもかかわらず、判例・通説の明文化や立法事実に基づく個別の条項の改正を越えて、履行障害法(債務不履行、解除、危険負担)に関わる基本原則の変更を含む、民法の全面的な改正をしようとするのであれば、これから取りまとめられる要綱仮案についても、広く国民の声を聞き、国民の理解とコンセンサスが得られるよう、十分な時間をかけて検討すべきであって、拙速は絶対に避けなければならない(日本弁護士連合会も、中間的な論点整理に対する意見において、「パブリックコメントについても、次にもう1回行われて終了というような拙速は絶対に避けなければならない」としているところである)。
以上の理由から、当会は、今後民法改正作業が進行し要綱仮案が取りまとめられた際には、改めて国民の意見を聞くパブリックコメント手続に付すよう求める。
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2013年11月9日
山梨県弁護士会
会長 東條 正人