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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効につき特別の立法措置を求める会長声明

 平成23年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下「本件原発事故」という)から2年7か月が経過した。
 本件原発事故によって損害を蒙った被害者から東京電力株式会社(以下「東京電力」という)への賠償請求の性質は、民法第709条の不法行為に基づく損害賠償請求であるところ、不法行為に基づく損害賠償請求権は民法第724条前段において「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」という短期で消滅時効が完成することとされている。
 本件原発事故による損害賠償請求に、この短期消滅時効の規定が適用されるとすれば、あと5か月を経過すると消滅時効が完成し、損害賠償請求権が失われるおそれがある。
 本件消滅時効問題への対応に関して、東京電力は、「仮にそれぞれの損害項目について時効が完成した場合でも、ご請求者さまの個別のご事情を踏まえ、消滅時効に関して柔軟な対応を行わせていただきたい(福島県公開質問状への回答)」と述べ、また、平成25年6月25日付け総合特別事業計画においても、消滅時効に関する自社の見解を表明している。しかし、東京電力は債務を承認したり、消滅時効の援用権放棄を確約しているわけではなく、被害者は不安定な立場におかれている。
 しかも、本件原発事故により生活の基盤を根こそぎ奪われた被害者の多くは、いまだ避難生活を余儀なくされており、経済的にも精神的にも困難な状況に置かれ、今後の生活の再建の道筋さえ見通せない状況にある。このような状況にある被害者が、本件原発事故から3年以内に、複雑なADRの申し立て、訴訟提起を行なうことは困難と言わざるを得ない。
 よって、当会は、国に対し、本件原発事故の損害賠償請求権について、民法第724条前段を適用せず、3年間の短期消滅時効によって消滅しないものとする立法措置を講じることを強く求める。

 

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2013年10月12日

山梨県弁護士会
会長 
東條正人