声明の趣旨
声明の理由
現在、地方消費者行政の充実のための国の支援の在り方について検討が進められている。しかしながら、地域主権改革の議論も同時進行しており、地域主権を重視するあまり、地方消費者行政に対する国の役割・責任が不明確ないし不十分となることが懸念される。
地方消費者行政は、地方自治体が独自の工夫・努力によって充実させるのが本来であるが、消費者庁発足以前においては消費者行政を推進する中央官庁が存在しなかったこともあり、消費者行政に対する地方自治体の意識・体制は、地方自治体により大きな格差がある。財政事情も地方自治体により格差があることも考慮すると、消費者行政充実のための実効的な財政措置をすべて地方自治体が自主的に講じることは、困難な状況にあると考えられる。また、地方自治体が担っている消費者行政の業務の中には、PIO-NETへの情報入力作業や、違法業者に対する行政処分等、国全体の利益のためのものも存在する。このような状況からすると、地方消費者行政に対する国の財政的支援は必要かつ相当であるといえる。現在、国からの財政的支援として、地方消費者行政活性化基金が存在するが、同基金は平成24年度で終了してしまうため、消費生活相談員や地方自治体正規職員の増員による人的体制強化等の継続的な措置を講じることが困難であるばかりか、現在の相談体制の維持すら危ぶまれる自治体も存在している。
また、消費者行政に対する意識・体制に地方自治体により格差があることから、身近で専門性の高い消費生活相談窓口をすべての地方自治体が自主的に整備することは困難であり、人員・予算の不足等から、消費生活センターの設置や消費生活相談員の配置などの継続的負担に耐えられない小規模な自治体も存在する。このような自治体にとっては、消費生活センターの設置等に向けて第一歩を踏み出すことは容易ではない。そのため、国において、都道府県や他の市町村との連携により複数の自治体が共同で消費生活センターを設置・運営する等の具体的かつ効率的な方策を提示することにより、積極的に各自治体に対して支援をしていくことが重要である。
さらに、消費者相談を現場で担っている消費生活相談員については、期限付きの非常勤職員の扱いが大半であり、その地位の安定と経験の積み重ねによる専門性の向上を図ることが困難な状況にある。その待遇も、専門性に見合ったものとは言い難い状況にある。住民が安心して相談できる相談窓口を実現するためには、消費生活相談員の専門性の向上とともに、その地位の安定、待遇の改善に向けた制度の整備が重要である。
以上のような諸課題の解決に向けた地方消費者行政への支援として、国は、声明の趣旨記載のとおりの施策を行うよう求める。
2012年9月8日
山梨県弁護士会
会長 清水 毅