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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

上限金利の引き上げ及び総量規制の撤廃に反対する会長声明

 深刻な多重債務問題解決のため、上限金利の引き下げ及び収入の3分の1以上の貸付を禁止する総量規制を含む改正貸金業法が2010年(平成22年)6月18日に完全施行されてから2年が経過した。
 改正貸金業法が目指したとおり、5社以上の借入れを有する多重債務者が法改正前の230万人から44万人に減少し、2006年度は約16万件あった自己破産申立件数も2011年度は10万件を下回り、多重債務による自殺者は、警察庁の統計によれば、2007年は年間1973人だったものが2011年は998人に半減するなど、上限金利の引き下げ及び総量規制は多重債務対策として大きな成果を上げている。

 当会においても、改正貸金業法の完全施行以前から多重債務に関する法律相談料の無料化や弁護士紹介制度を設けるなど、多重債務者の救済及びその生活再建や自殺の予防、ヤミ金被害の救済等に向けた活動を行ってきた。
 他方、改正貸金業法の完全施行に際して増加が懸念されたヤミ金の被害については、現時点においても被害の増加は認められず、当会の会員又は山梨県内の多重債務問題に取り組んでいる諸団体からそのような指摘を受けることもない。

 ところが、与野党の一部の国会議員の間からは、正規の業者から借りられない人がヤミ金から借入れをせざるを得ず、潜在的なヤミ金被害が広がっている、零細な中小企業の短期融資の需要があるとして、上限金利の引き上げや総量規制の撤廃が主張されている。
 しかし、ヤミ金については、相談件数も警察の検挙数も減っており、被害規模も小型化するなど、ヤミ金被害が広がっている根拠はない。また、ヤミ金被害対策については取り締まりを厳格化するとともに相談体制をさらに充実させ、借りられない人に対するセーフティネットの活用によって多重債務者をなくすことが重要である。

 さらに、中小企業に対する貸付については総量規制の対象外又は例外的な貸付が可能である。中小企業に対するアンケート結果でも、資金繰りの悪化要因として改正貸金業法の影響をあげる中小企業はほとんどなく、上限金利の引き上げは、資金繰りに苦しむ中小企業に対してさらなる負担を強いることになるだけである。中小企業に対して必要な対策は、「短期の高利の資金」提供ではなく、総合的な経営支援策である。

 したがって、一部国会議員による上限金利の引き上げや総量規制の撤廃を求める主張は、その前提を欠いている。また、いま上限金利が引き上げられ総量規制が撤廃されれば、多重債務者、自己破産者、多重債務を原因とする自殺者が再び増加することは、過去の経験から明らかである。

 よって、当会は、改正貸金業法の成果を無にし、再び深刻な多重債務問題を引き起こすこととなる上限金利の引き上げ及び総量規制の撤廃に強く反対するものである。

2012年8月4日

山梨県弁護士会
会長 
清水 毅