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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

「裁判所法の一部を改正する法律」の成立に伴い司法修習生の給費制の復活を求める会長声明

第1 声明の趣旨
     司法修習生に対する給費制を復活するための議論を十分に行うため、平成24年7月27日
    に成立した「裁判所法の一部を改正する法律」に基づき設置される合議制の組織においては、
     ① 従来の法曹養成フォーラムとは異なる委員を選任すること
     ② 貸与制が実施されている第65期司法修習生の現状を十分に調査すること
    を強く求める。

第2 声明の理由

  1.  平成24年7月27日に裁判所法の一部を改正する法律が成立した。本改正は、昨年11月から実施となった司法修習生に対する修習資金の貸与制を維持することを前提に、経済的困窮者に対しては返済猶予を認めるというものであり、到底賛同することはできない。
      法科大学院入学のための適性試験受験者数が平成24年に約5800名にまで減少している中でこのまま貸与制を維持することは、さらに法曹志望者を減少させ、多様な人材の確保がより困難になることは明らかであり、従前実施されてきた司法修習生に対する給費制を復活させるべきである。

  2.  他方で上記法律には、閣議決定に基づく合議制の組織(以下「新たな合議制の組織」という。)において、質の高い法曹を養成するための法曹養成制度全体についての検討を加えた結果を一年以内に取りまとめることとし、その検討にあたっては、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにすること、司法修習生に対する経済的支援については、司法修習生の修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し、必要に応じて適切な措置を講じること等の附帯決議が付けられている。
      国会の審議においても、給費制の復活を排除するものではないことが確認されており、かかる点は評価しうるものである。

  3.  しかしながら、新たな合議制の組織において、昨年設置され、実質的に僅か3回の会議で貸与制を是とした法曹養成フォーラムの委員がそのまま委員に選任されたならば、新たな合議制の組織における議論が充実したものになるとは到底考えられない。そもそも法科大学院や大学の関係者は、法曹養成について重大な利害関係を有しており、これらの者を委員に選任すべきではない。新たな合議制の組織においては、法科大学院や大学等の利害関係者を全面的に排除し、 一般市民を含めた多様な意見が反映されるように委員を選任すべきである。
     また新たな合議制の組織においては、貸与制が初めて実施され、貸与制による多大な弊害が生じている第65期司法修習生の生の声を聞き、その現状を十分に調査すべきである。
  4.  現在、法曹を志望する者にとって原則として法科大学院の修了が要件になるなど経済的負担が大きな障壁になっていることは明らかであり、貸与制の維持はさらに法曹志望者を減少させることにつながるものである。我々は、新たな合議制の組織において、司法修習生に対する給費制を復活するための議論を十分に行うため、声明の趣旨に記載された措置を強く求める。

2012年8月4日

山梨県弁護士会
会長 
清水 毅