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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

県内全市町村に対し暴力団排除条例の早期制定を求める会長声明

声明の趣旨

   山梨県内全市町村において,暴力団排除条例をすみやかに制定するよう求める。

声明の理由

  1.  暴力団は,その団体の構成員である暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体であって,その共通した性格は,その団体の威力を利用して暴力団員に資金獲得活動を行わせて利益の獲得を追求するところにある。
     昨今,暴力団員によるスポーツ観戦,芸能人と暴力団員との交際などが問題視され,新聞紙上を賑わわせたことは記憶に新しい。これら暴力団の排除は,一般市民が常に希求するところである。
     山梨県内でも,ここ数年,甲府市内,笛吹市内,大月市内において暴力団排除のための住民集会やデモ行進などが行われ,多数の住民が参加した。また,指定暴力団を多数の構成員が脱退したことによる抗争への懸念や不安感から甲府市中心街への人出が激減したことから,同地の商店街連盟,各自治会等を中心に暴力団等に対するみかじめ料縁切り同盟発足に向けた動きが活発化している。同旨の縁切り同盟は,昨年11月に昭和町で,また本年2月に県遊技業協同組合でも結成されるなど,県内各地では,暴力団排除を推進するための住民レベルでの気運が満ちている。 
  2.  現在,国においては,暴力団事務所の使用制限の拡大,暴力団構成員の行動制限などを企図した,「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(いわゆる暴力団対策法)の改正が論議されている最中にある。また,平成19年に示された犯罪対策閣僚会議における「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の中で,反社会的勢力との一切の関係遮断を旨としてから,各種業界団体において暴力団排除に向けた取組みが懸命になされているところである。
  3.  このような暴力団排除の動きは,全国各都道府県にも広がっており,山梨県においても,本年4月1日から暴力団排除条例(以下「県条例」という。)が施行されるに至った。この条例は,暴力団排除に関する基本施策,青少年の健全な育成を図るための措置,暴力団員等に対する利益の供与の禁止等を定めることにより,暴力団の排除を推進し,もって県民の安全かつ平穏な生活を確保し,及び社会経済活動の健全な発展に寄与することをその目的としている。また,「暴力団を恐れない」,「暴力団に資金を提供しない」,「暴力団を利用しない」ことなどを基本理念とし,県,県民,事業者,関係機関及び関係団体による連携・協力やそれぞれの責務を明記するものである。さらには,県は各市町村に対して,暴力団の排除のための施策が講じられるよう,情報の提供,技術的助言その他の必要な協力を行うものとされている。
  4.  しかしながら,暴力団排除対策は,社会全体で取り組むことではじめて効果を発揮するものであり,県条例の趣旨を実効あらしめるためには,個々の住民を最も身近で支える市町村において,その意を鮮明にし,官民が一体となって行動していくことが求められる。また,現状において県条例の制定だけでは,市町村レベルでの行政対象暴力への対応,すなわち市町村職員等への不当な要求に対する措置,市町村の契約事務における暴力団排除,給付金の給付等における暴力団排除及び公の施設における暴力団排除を全うすることができない。このような現状に照らし,暴力団の資金獲得活動を規制し,暴力団組織の弱体化を図るためには,県条例の制定のみでは不十分であり,これに併せて,山梨県内の27市町村すべてにおいて,暴力団排除条例が制定される必要がある。
  5.  山梨県弁護士会では,民事介入暴力被害者救済センターにおいてこれらの運動に協力するとともに,日頃から「民暴110番」としての相談対応体制を整えている。また,平成13年に締結した,山梨県警察本部及び公益財団法人山梨県暴力追放推進センター(当時は財団法人山梨県暴力追放県民会議)との間のいわゆる三者協定に基づいて,暴力団対策に係る研修を相互に行う中で協調関係を築いている。
     当会では今後も引き続き,暴力団排除対策への努力を継続する所存であるが,山梨県内における市民生活の安全と平穏の確保を図り,もって市民の自由と権利を保護するために,県内全市町村においては,県条例が施行されたこの時期を逸することなく,暴力団排除条例をすみやかに制定されることを求めるものである

2011年11月12日

山梨県弁護士会
会長 
柴山 聡