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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

全面的国選付添人制度の実現を求める決議

1 少年に対する弁護士付添人の援助の必要性

弁護士は、少年審判において、付添人として、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。

少年は、成人に比して未熟であり、えん罪の危険性は大きい。また、少年たちの多くは、家庭で虐待を受け、学校で疎外されるなど、居場所がなく、信頼できる大人に出会えないまま、非行に至っており、少年に対して法的援助をするとともに、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、極めて重要である。

わが国も1994年5月に批准した子どもの権利条約は、「自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有」する(37条(d))、「刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は」、「防御の準備及び申立てにおいて弁護人その他適当な援助を行う者を持つこと」、「法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い・・・の下に遅滞なく決定されること」について保障を受ける(40条2項(b)(ⅱ)(ⅲ))と規定している。

さらに、国連子どもの権利委員会は、2010年6月、日本政府の第3回政府報告書審査に基づく最終見解において、少年司法に関し、「すべての児童が手続のあらゆる段階で法的及びその他の支援を受けられることを確保すること」(パラグラフ85(d))と勧告している。このように、少なくとも身体拘束を受けた少年に対して弁護士の法的援助を実質的に確保することは、国際的にも求められている。

しかしながら、多くの少年やその保護者には、弁護士付添人の費用を負担する資力がなく、仮に保護者に資力があったとしても、少年のために費用を支出することには消極的な場合がほとんどであって、少年が弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障するためには、国選付添人制度が必要である。

2 現行国選付添人制度拡大の必要性

資力のない少年に弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障するためには、国費でこれを付する制度が不可欠であるが、2007年に導入された現行の国選付添人制度は、その対象事件を殺人、強盗等の重大事件に限定しており、しかも、裁判所が必要と認めた場合にのみ裁量で付する制度にとどまっている。このため、家庭裁判所の審判に付され、観護措置決定により少年鑑別所に身体拘束された少年は、11、241人に上るのに対し、国選付添人が選任された少年は、わずか516人(約4.6%)にすぎない(2009年)。

しかしながら、少年鑑別所に収容された少年については、刑事処分を相当とする検察官送致や少年院送致、児童自立支援施設送致等の収容をともなう保護処分といった重大な処分となる可能性が高く、適正な処分の選択や少年の納得という観点からも、弁護士付添人の援助が必要であり、弁護士による援助の必要性は罪名で区別することはできない。

さらに、2009年5月21日以降、被疑者国選弁護制度の対象事件が、いわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたが、国選付添人制度の対象事件は限定されたままであるため、多くの事件で被疑者段階で選任された国選弁護人が、家庭裁判所送致後には国選付添人として活動することができないという事態が生じている。

被疑者国選弁護人は、家庭裁判所での少年審判を見据えて少年に働きかけを行ったり、被害者と示談交渉をするなどの弁護活動を行っているのであり、少年が私選で選任しない限り、家庭裁判所送致後に付添人として活動することができないというのは大きな制度的矛盾である。

したがって、国選付添人制度の対象事件を拡大することは喫緊の課題である。

3 当会及び全国の弁護士会の取組み

資力のない少年に弁護士付添人の援助を実質的に保障するためには弁護士費用の援助が不可欠であるが、国選付添人制度は極めて限定的なものであり、当会を含む全国の弁護士会は、このような事態を放置できないことから、身体拘束を受けたすべての少年に対して弁護士付添人の援助を受ける権利を保障するべく、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施している。また、日弁連は、2009年6月以降、すべての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を創設し、同基金を財源として弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を拡充しており、同制度による少年保護事件の援助件数は、2009年度で6914件にのぼっている。

4 全面的国選付添人制度の実現を

上記のとおり、全国で身体拘束を受けた少年のすべてを対象とした全面的国選付添人制度への対応態勢は確立されている。

現在、弁護士付添人のほとんどは、少年保護事件付添援助制度を利用したものであるが、援助制度は、あくまでも、全面的国選付添人制度実現までの暫定的な措置であって、上記のような少年にとっての弁護士付添人による援助の重要性に照らせば、本来、国費によって付するべきものである。

よって、当会は、政府及び国会に対して、速やかに、国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された少年の事件全件にまで拡大する少年法改正を行うことを求める。

2011年5月13日

山梨県弁護士会