今年は、憲法が施行されて60年になる。戦争が終わってから62年。また、暑い夏がやってきた。戦争終結の8月とは、同時に広島・長崎に原爆が投下された 8月でもある。一瞬にして、多くの尊い命が奪われた点において、また、その後の後遺症が悲惨であったことも合わせ考えると、原爆の投下による悲劇は、人類 の歴史においてこれ以上の悲劇はないと考える。私たちは、このような悲劇を二度と起さぬよう努力しなければならない。
ところで、私は、7月21日に日弁連が東京の日弁連会館で開催した「憲法改正と人権・平和の行方」というシンポジウムに参加した。そこで、フリージャー ナリストの西谷さんがイラクで撮影した現地の様子を見て大変驚いた。ひとつは、子供も含めた民間人が多数銃撃戦等により被害が出ている実態である。もう一 つは、劣化ウラン弾によるものと考えられると報告されていた放射能被爆による白血病等の被害者の実態である。
今年、山梨県弁護士会では、11月10日に「憲法9条は改正すべきか」というテーマでシンポジウムを開催する。9条改正派は、国際協調による世界の平和の 維持に日本も貢献すべきであるし、そのためには自衛隊による海外活動を可能にすべきとの論調である。改正反対派は、改正により自衛隊が海外での武力行使に 荷担し、結果として日本は、戦争に荷担し、被害を拡大させ、また、日本自身も戦争に巻き込まれることになるとの論調である。
イラク戦争だけ見れば、あの戦争が本当に国際社会やイランの平和のためになったのかは疑問である。戦争のきっかけとなった大量破壊兵器はついに発見されなかった。ましてや、イランの普通に暮らしている人々にとって望ましい世界が現在あるとは到底考えられない。
「平和のための戦争」とはなんと矛盾に満ちた言葉であろうか。
9条の改正については、改正論者も改正反対論者も、どちらも「平和」を願っていることにおいて違いはない。しかし、その方法は大きく異なっている。
この論争を私たちは冷静に見極め、真の平和のために行動しなければならないと考える。
2007年8月10日
山梨県弁護士会
会長 小澤 義彦