ページの先頭です

山梨県弁護士会について

声明・総会決議

共謀罪の新設に反対する会長声明

衆議院解散により一旦廃案となっていた「犯罪の国際化並びに情報処理の高度化に対処するための 刑法等の一部を改正する法律案」は、昨年10月4日付けで第163回国会(特別会)に再度上程された後、 継続審議となっていたので、本日、第164回国会(常会)が召集されたことにより、この国会で審議されることとなった。

この法案の中には「共謀罪」の新設が規定されている。
「共謀罪」は、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、 5年以下の懲役または禁固もしくは、2年以下の懲役または禁固に処するというものである 。

共謀罪は、「国際的な犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という。)の批准のための国内法を整備するために上程されたものであるが、条約は、国際的テロ行為を防止することを目的としたものであり、第3条において「性質上越境的なもの」との限定が加えられているのに対し、国会で審議される共謀罪については、かかる要件が欠けているため、他の600以上の国内犯罪にも適用される虞がある。

また、「犯罪の共謀を行った者の一部が実行に着手した場合にのみ、他の共謀者にも犯罪が成立する。」という共謀共同正犯理論が我が国の確立した判例理論である。

しかし、共謀罪は、実行の着手、予備行為さえも不要とし、犯罪実行の意思の合致のみで処罰が可能となり、共謀共同正犯理論に反するだけでなく、株式会社、NPO、宗教法人等あらゆる団体の活動が処罰対象となり、刑法の自由保障機能を形骸化させ、思想・良心の自由、表現の自由、結社の自由といった基本的人権が侵害される虞もある。

条約第5条第1項には、「国内法上求められるときは、その合意の参加者一人による当該行為の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」と規定されているが、共謀罪においては、まったくこの点が欠落しており、条約批准に便乗して国家による個人のプライバシーへの干渉を強化しようとするものである。

以上のように、共謀罪は、明確性の原則、自由保障機能といった刑法の大原則に反し、その適用範囲、処罰対象が必要以上に拡大された結果、国民の基本的人権に対して重大な影響を与えるものであって、当会としては、これに断固反対の意思を表明するものである。

2006年1月20日

山梨県弁護士会
会長 
田中 正志