当会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求める。
確かに、イラクの現状を見ると、国際的復興・人道支援が必要とされ、求められていることは十分理解しうるものであるが、同支援は国連を中心とした枠組みのもとで、非軍事的な分野・手段で行われるべきであり、かつ、イラク国民が真に期待し要望するものでなければならない。
今回の自衛隊のイラク派遣は、国連のPKO活動に対する協力としてなされるものではなく、国連の要請もイラクの同意も存しない。イラクでの自衛隊の活動は、米英による侵攻の戦後処理としての占領行政に対する協力にほかならない。しかも、この米英によるイラク侵攻は、国連憲章に反するとの指摘の中で、イラクの保有する大量破壊兵器等の危険性排除を理由として開始されたものであるにもかかわらず、大量破壊兵器等は発見されておらず、米英の主張した正当性も失われ、その国際法上の違法性が明らかになりつつある。
今回の自衛隊イラク派遣の根拠であるイラク特措法の基本原則は、「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」というものである。しかし、現在イラクでは、全土で連日のように、米兵等の軍事関係者のみならず国際機関職員や外交官さらには一般市民にまで攻撃が加えられ、多数の死傷者が出ている。米軍も認めるとおり、「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域」であり、安全な「非戦闘地域」などが存在しないことは明らかであって、今回の自衛隊のイラク派遣は、イラク特措法にも違反するものである。また、そもそもこのイラク特措法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を容認することにつながるものであり、国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きい。
自衛隊のイラク派遣は、上記のとおり米英の占領行政に対する協力としての性格をも担うものといえ、そのため、派遣された自衛隊が、米英軍の協力者として攻撃目標となり、戦闘に巻き込まれて武器を使用する事態が起きることは回避できない状況にある。これは、自衛隊員に死傷者が出るだけでなく場合によってはイラク国民にまで危害を及ぼす事態となることを重く受け止めるべきである。「テロに屈してはならない」「汗を流す必要がある」との掛け声のもとに、若い自衛隊員の尊い生命が犠牲とされること、また自衛隊の武力行使によりイラク国民に犠牲者を出すことは、決して容認できない。今回の自衛隊派遣は、イラク特措法が懸念した事態を引き起こし、憲法が禁止している自衛隊による武力行使という事態を招く危険性を強く有するものである。
よって、当会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求めるものである。
2004年2月27日
山梨県弁護士会
会長 深澤 一郎