今、司法修習生に対して修習に専念させるために給与を支払う制度(給費制)を廃止しようとする動きがある。
しかし、山梨県弁護士会は次の理由から給費制廃止に強く反対する。
司法修習生の修習制度は、単なる職業人の養成だけではなく、国民の権利擁護、法の支配の実現にかかわる専門家たる法曹を養成するものであり、質の高い法曹を養成することは国の重大な責務である。
司法修習生には、修習専念義務が課せられ、他の職業に就いて収入を得る方法を閉ざされているので、給費制を廃止するときは、司法修習生の生活を困難にさせ、十分な修習の実を上げられず、よって国民の期待に応じられるような質の高い法曹が養成されない状況に至る可能性が高い。
更に、修習生になる直前の法科大学院での2、3年間の学費・生活費の経済的負担を考えると、経済的な弱者は法曹への志望を断念することにもなりかねず、その結果、法曹が一定の富裕層に偏ってしまい、多種多様な人材が得られなくなることも十分に予想されるところであり、これは、大きな国家的・社会的損失と言うべきである。
この点につき、現行の給費制を貸与制に切り替え、司法修習生が裁判官や検察官に任官した場合にはその償還を免除するとの貸与制案もあるが、この考えは、弁護士が、裁判官や検察官と同様に基本的人権の擁護と社会正義の実現の担い手として高い公共性と公益性を国民から期待され、この期待に応えるべく、職務上だけでなく公益活動など多くの場面で絶え間ない努力を重ねていることを全く軽視しまたは無視するもので、法曹三者間の不公平が甚だしく、到底容認できるものではない。
国には司法制度改革を実現するために必要な財政上の措置を講じることが義務付けられているのであって、財政的事情から司法修習生の給費制を廃止することは本末転倒である。 よって、司法修習生の給費制を維持することを強く要請する。
2003年10月16日
山梨県弁護士会
会長 深澤 一郎