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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

死刑制度に関する公的な会議体の速やかな設置等を求める会長声明

  1.  「日本の死刑制度について考える懇話会」は、2024(令和6)年11月13日、報告書(以下「懇話会報告書」という。)を公表した。
     懇話会は2024(令和6)年2月29日、日本における死刑制度のあるべき方向性について真摯に議論を行い、関係諸機関に対し死刑制度について提言を行うことを目的として、国会議員や学識経験者、警察・検察出身者、弁護士、経済界、労働界、被害者団体、報道関係者、宗教家及び文化人など各層の有識者を委員として設立された会議体であり、12回にわたる会議を通じての検討結果を懇話会報告書に取りまとめている。
  2.  懇話会報告書では、①死刑は個人の生命を剥奪する究極の刑罰であり、他の刑罰(自由刑や財産刑)が個人の権利の一部を制限するのとは異なり、人権の基盤にある生命そのものの全否定を内容としていること、②死刑制度には誤判による「無辜の処刑」という最悪の事態をもたらす危険がある上、ここにいう「誤判」の中には、被告人が真犯人かどうかという、犯人性に関する判断の誤りばかりでなく、責任能力等の判断の場面における誤り、被告人に有利な量刑事情の見落とし、たとえば、被告人の生育環境の劣悪さを十分に評価しなかったり、生物学的ハンディを見落としたりすることに起因する量刑判断の誤りなども含まれることから、誤った死刑判決が下されるのは稀有な例外的場合にすぎないと言い切れないこと、③死刑廃止が国際的潮流であり(法律上又は事実上の廃止国は、国連加盟国の7割を超える)、日本政府が国連からも死刑廃止の勧告を受けている中で、死刑を存置し、かつ執行を継続していることが日本の国益を損ねている疑いがあることに加え、④刑事司法の分野における政策決定にあたり、凶悪犯罪の被害者遺族のもつ被害感情・処罰感情と国民一般が抱く共感はその基本に置かれなければならないとしながらも、被害者遺族のもつ被害感情・処罰感情が死刑制度の根拠となるかは別の問題であり、死刑制度の是非いかんにかかわらず、被害者遺族への支援の充実・強化を進める必要があり、被害者遺族の置かれた実情と支援の在り方について立ち入った検討を行う必要があることなどが指摘されている。
     そして、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない。」という基本的な認識を示し、その委員全員の一致した意見として、早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置することを提言し、その会議体においては、 現行の死刑制度に関するあらゆる情報を集約しつつ、幅広い視野から制度の問題点の調査を行い、この制度の存廃や改革・改善に関する個別的な検討に基づき、法改正に直結する具体的な結論を提案すべきであるとしている。
     また、死刑判決の確定後、その執行に至る手続及び執行方法との関係でも、具体的な改善の要否を検討すべき種々の問題点が存在していると指摘し、前記の会議体においては、具体的な結論を出すまでの間、死刑執行を停止する立法をすることの是非、あるいは執行当局者において死刑の執行を事実上差し控えることの是非についても、これを検討課題とすべきであるとしている。
  3.  当会は、2020(令和2)年3月31日に、国会に対して最高刑のあり方に関する議論を求めるとともに、その結論が出るまでの間、全ての死刑執行の停止を求める会長声明を発出し、2025(令和7)年2月28日には、①速やかに死刑制度を廃止すること、②死刑に代わる刑罰について速やかに議論し、これを導入すること、③死刑制度廃止までの間、死刑の執行を停止することを政府及び国会に対して求める総会決議を採択している。
     日本の死刑制度は、1882(明治15)年制定の旧刑法によって、執行方法を絞首刑と定められたものが、現行の刑法にも引き継がれ、今も100名以上の死刑囚がいるが、これを現状のままに存続させ、死刑執行を継続することは、もはや許されないと言うべきである。
  4.  よって、当会は、国会及び内閣に対し、死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置し、その会議体において、その法改正に直結する具体的な結論の提案がなされることを求める。

2025年6月12日

山梨県弁護士会
会長 
大西達也