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声明・総会決議
:: 甲府市内で発生した殺人放火事件における死亡被害者の実名報道に抗議するとともに、犯罪被害者等の意に反する実名報道に慎重を期すよう求める会長声明
声明・総会決議
甲府市内で発生した殺人放火事件における死亡被害者の実名報道に抗議するとともに、犯罪被害者等の意に反する実名報道に慎重を期すよう求める会長声明
2021年(令和3年)10月12日に甲府市内で発生した殺人放火等事件(以下、「本件事件」という。)に関し、2023年(令和5年)10月25日の初公判の前後から本年1月18日の判決以降にかけて、一部の報道機関により、本件事件の死亡被害者2名について実名報道が行われた。
本件事件においては、遺族から報道機関に対して実名報道をしないように繰り返し要請がなされるとともに、本件事件の刑事裁判においても、裁判所により被害者の氏名を含む被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定(以下、「秘匿決定」という。)がなされていた。
当該報道機関は、これらの事実を把握していた中で被害者の実名報道を行ったものである。
報道の自由は国民の「知る権利」に資するものとして憲法上保障されており、被害者に関する報道を行うことも必要である。
他方で、被害者及び遺族の人格権としての名誉やプライバシーは憲法13条で保障され、私生活の平穏も人格的利益として法的保護に値する権利である。その中でも重大事件の被害者・遺族であるという事実は他人にみだりに知られたくない情報であり、これらが実名を伴って報道されれば被害者及び遺族の名誉、プライバシーが害され、私生活の平穏が脅かされる極めて重要な情報であるから、これらを報道するにあたっては、遺族の思いを十分に尊重し、報道の要否について慎重に判断すべきことは明らかである。
立法的にも、被害者の名誉及び私生活の平穏の保護を図る方向での法整備が進んでおり、2007年(平成19年)には、公開を原則とする公判廷において被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがある場合に、被害者の氏名を含む被害者特定事項を秘匿する制度が創設された(刑事訴訟法290条の2第1項3号)。本件事件における裁判所の秘匿決定もこれに基づくものである。
これらを踏まえれば、本件事件に関して、当該報道機関が被害者の実名報道をしたことは、遺族の意向に反するとともに、被害者及び遺族の名誉、プライバシーへの配慮を欠き、遺族の社会生活の平穏を保護するという刑事訴訟法の趣旨を没却させるものであり、そのような不利益を遺族に強いてまで実名報道を行う合理性は認められない。
犯罪被害者等基本法6条には、国民は犯罪被害者等の生活の平穏を害すること等がないように十分に配慮する責務があるとされている。当然、報道機関も、被害者の実名報道を行うに際しては、そのような配慮を行わなければならない。
よって、当会は、本件事件において、遺族の意向に反し、被害者の実名報道がなされたことに対し抗議するとともに、報道機関に対し、改めて犯罪被害者等の意に反する実名報道には相当に慎重を期すことを求めるものである。
2024年2月9日
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花輪仁士
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