岸田文雄内閣総理大臣は、本年2月1日の第211回通常国会衆議院予算委員会において、同性婚に関する質問を受け、「家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題」であり、「極めて慎重に検討すべきだ」と述べました。内閣総理大臣前秘書官は、同月3日、記者団から内閣総理大臣の前述の発言について質問された際、「(同性婚制度の法制化について)社会のありようが変わってしまう。国を捨てる人、この国にはいたくないと言って反対する人は結構いる」「秘書官室もみんな反対する」「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」等と発言しました。
このような前秘書官の発言は、性的少数者の尊厳を損なう発言と言わざるを得ず、憲法13条及び14条並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)2条1項、17条及び26条により保障される性的少数者の権利を侵害し、許されるものではありません。
憲法24条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」するとしています。
これは、婚姻が当事者の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであることを明らかにする趣旨であって、同性間の婚姻を禁止するものとは捉えられません。
同性間の婚姻が認められていない現状は、婚姻の自由を侵害し、法の下の平等に違反するものとして、憲法13条、14条に照らし重大な人権侵害にあたります。
当会は、前秘書官による性的少数者に対する差別発言に強く抗議します。
また、国に対しては、性的少数者に対する理解を深め、差別を撤廃するために実効性ある施策を進めると共に、同性婚の法制化を実現することを求めます。
2023年3月8日
山梨県弁護士会
会長 石川 恵