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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

「袴田事件」第二次再審請求審差戻し後即時抗告審における再審開始決定を受けて、速やかに再審公判に移行させること及びえん罪被害者の速やかな救済のために刑事訴訟法の改正を求める会長声明

  1.  東京高等裁判所は、2023年3月13日に袴田巌氏の第二次再審請求審差戻し後即時抗告審(いわゆる袴田事件)において検察官の即時抗告を棄却し、再審を開始する決定をした。
     静岡地方裁判所が再審開始並びに死刑及び拘置の執行を停止したのは2014年3月27日であり、その後現在まで約9年経過したが、未だに再審公判が開かれることすらなく、手続が著しく遅延している状況にある。袴田巌氏は現在87歳であり、長期間にわたる死刑囚としての身体拘束による拘禁反応の症状が見られている。また、第二次再審請求を行っている袴田巌氏の姉も現在90歳となっている。人道的な観点からもこれ以上の手続の遅延は許されない。
     袴田巌氏に対する無罪判決が下されるため、検察官は本決定に対して特別抗告せず、一日も早く再審公判に移行させることを強く希望する。
  2.  また、令和5年2月27日に、いわゆる日野町事件について、大阪高等裁判所が下した再審開始決定に対しては、同年3月6日、大阪高等検察庁が最高裁判所への特別抗告を行った。この特別抗告により、さらに再審開始の審理の長期化が見込まれることとなった。
     袴田事件にとどまらず、再審開始決定に対する検察官の不服申立ては、再審を求めるえん罪被害者の速やかな救済を阻んでいるのが実情である。
     したがって、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止する刑事訴訟法の改正が必要である。
  3.  さらに、袴田事件においては、第二次再審請求の請求審において、新たに600点以上もの証拠が開示されたが、開示が実現したのは裁判所の積極的な訴訟指揮によるものであった。すなわち、再審における証拠開示が実現できるかは、裁判所の裁量に委ねられているということになる。えん罪被害者の救済のためには、再審における全面的な証拠開示の法制化が急務である。
  4.  以上より、当会は、袴田巌氏を一刻も早くえん罪から救済するために速やかに再審公判に移行することを望むとともに、再審開始決定に対する検察官の不服申立の禁止と再審における全面的な証拠開示の法制化を含む刑事訴訟法の改正を行うことを国に対して求めるものである。

2023年3月13日

山梨県弁護士会
会長 
石川 恵