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:: 沖縄県民の民意を尊重し、辺野古新基地建設工事の再考を求める会長声明
声明・総会決議
沖縄県民の民意を尊重し、辺野古新基地建設工事の再考を求める会長声明
政府は、普天間飛行場の代替用地を米国軍に提供するため、2018年12月14日、沖縄県北部の辺野古崎海域で埋め立て工事に着手し、辺野古新基地の建設を開始した。
在日米軍基地は戦後の占領期から今日まで80年近くにわたり沖縄県に集中してきた。悲惨を極めた沖縄戦の後、占領軍により強制収容された土地に米軍基地が建設され拡張され続けてきた。現在でも、沖縄県内に在日米軍施設の7割以上が集中し、米軍機墜落等の重大事故や米軍人・軍属による犯罪が多発している。また、米軍基地周辺での騒音被害や環境汚染なども生じているにもかかわらず、米軍の施設・区域内は、アメリカの全面的な管理権が認められているため(日米地位協定第3条)、地方自治体の行政権を及ぼすことができない。このため、沖縄県は、上記の騒音被害や環境汚染などに対してすら有効な規制手段をとることができず、基地の存在は沖縄県民の平穏な生活に重大な不利益をもたらしてきた。
沖縄県では、地方自治法第74条に基づく直接請求により「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」が制定され、2019年2月24日、辺野古に計画している米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票が実施されたところ、埋め立て反対が71.7%を占めた(賛成は19.0%、どちらでもないは8.7%であった)。この結果により、長年基地負担に苦しんできた沖縄県民の多くが、辺野古新基地建設に反対していることが再確認された。
米軍基地建設については、国が所管する安全保障に関する事項であるから、県民投票によりその結果が左右されるべきではないし、法的拘束力もないとの見解もある。
しかし、憲法92条は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は「地方自治の本旨」に基づくことを規定しているところ、地方自治の本旨とは、地方自治が国から独立して地方公共団体に委ねられるという団体自治のみではなく、住民自治、すなわち地方自治が住民の意思に基づいて行われなければならないという民主主義的要請を含むものである。
そして、憲法95条は、住民自治の具現化として「一の地方公共団体のみに適用される特別法は…その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ」ならないと定め、特定の地方公共団体のみに不平等・不利益な特例を設けることを当該住民の意思にかからしめているのである。
これら憲法の法意からすれば、本件が米軍基地建設ないし移設についての特別法の制定ではなく、行政処分として行われるにすぎないことを理由として住民投票に法的拘束力がないというのは形式論でしかない。米軍基地の存在は、現に長年にわたって沖縄県の行政権を制約し、県民の平穏な生活に重大な損害と不利益を生じさせてきたのである。本件ではその一端である米軍移設のための埋め立てに反対の意思が表明されたのであるから、この意思は最大限尊重されるべきである。
辺野古新基地建設について、沖縄弁護士会は「同様のことが沖縄県以外の地域で問題となった場合、日本政府及び国民は、沖縄に対するのと同様に、不正義・不平等に目をつむり、唯一の解決策であるとして、当該施策を是認するのであろうか。本州や九州、北海道や四国で同様の不正義・不平等が生じた場合、日本政府及び国民は、正義及び尊厳の問題としてこれをとりあげ、解決に向けて、全体で取り組むのではなかろうか」(2018年総会決議)と指摘している。
山梨県においても、戦後11年近く、北富士演習場に米海兵隊が駐留しており、米兵による事件・事故が多発したこと、同演習場の米海兵隊が沖縄県に移転した後も、同演習場を含む本土の5か所において米海兵隊の砲撃訓練が断続的に実施されていることなどをも考えれば、辺野古新基地建設の問題は、沖縄県だけではなく当県を含むまさに日本全体の問題と言うべきである。
我々山梨県弁護士会は沖縄県民に寄り添い、沖縄弁護士会をはじめ全国の弁護士会・連合会と連携し、何をなすべきかを根気強く検討し、その意思を表していきたいと考える。
以上から、当会は、政府に対し、辺野古新基地建設事業について、これへの明確な反意を示した沖縄県の民意を尊重して真摯に向き合い、辺野古沖への土砂投入を一旦停止し、移設自体について根本的に再考することを求める。
2022年2月10日
山梨県弁護士会
会長
八巻力也
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