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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のための施策を求める会長声明

 民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)の施行日である2022年(令和4年)4月1日まで、4か月を切った。

 成年年齢引下げにより、18歳及び19歳の若年者が未成年取消権を行使できなくなり、消費者被害が拡大することへの懸念がこれまでも指摘され、当会も、2017年(平成29年)2月24日、「民法の成年年齢の引下げに反対する意見書」において、若年者に対する消費者保護施策の整備が不十分な点などを指摘し、安易な成年年齢の引下げに反対の意見を表明していたところである。

 本法律は、2018年(平成30年)6月に成立したが、参議院法務委員会において全会一致で付帯決議がなされ、本法律の施行にあたり、①若年者の消費者被害の拡大防止のために、知識、経験、判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)を創設すること(法成立後2年以内)、②若年者の消費者被害を防止し救済を図るために必要な法整備を行うこと(法成立後2年以内)、③マルチ商法等への対策について検討し、必要な措置を講ずること、④消費者教育を質量共に充実させること、⑤18歳、19歳の若年者への周知徹底や社会的周知のための国民キャンペーン実施を検討することなどが求められた。

 ところが、本法律の成立から3年以上が経過し、施行まで4か月を切った現時点においても、いずれの施策も不十分であると言わざるを得ない。特に消費者被害拡大防止のために必要不可欠な前記①のつけ込み型不当勧誘取消権の創設は、付帯決議に明示された期間を既に経過しているにもかかわらず、未だ創設されていない。また、消費者教育についても、「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」等が実施されているものの、消費者被害の予防につながる実践的な消費者教育が全国的に十分に行われているとは言い難い。

 当会においては、若年者への消費者被害拡大を防止し、若年者が安心して社会に出られるようにするため、高等学校において成年年齢の引下げに関する出前授業を行うとともにより理解を促すべく様々な論点をまとめた動画を配信するなど啓発活動を行っているところであるが、上記状況を踏まえ、4か月を切った成年年齢の引下げを前に、政府に対し、上記付帯決議に示されたような成年年齢引下げに伴う若年消費者被害の拡大防止に向けた実効性ある施策を直ちに実現するよう強く求める。

2021年12月10日

山梨県弁護士会
会長 
八巻力也