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声明・総会決議
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声明・総会決議
改正少年法の慎重な運用及び適切な見直しを求める会長声明
はじめに
本年5月21日、少年法等の一部を改正する法律(以下「改正少年法」という。)が成立した。
本改正は、成長発達権を保障する現行少年法が有効に機能してきたことを踏まえ、その適用年齢を引き下げず、18歳及び19歳の少年についても、すべて家庭裁判所に送致して成育歴や養育環境、少年の資質等を詳細に調査することが維持された。
しかし、改正少年法は、18歳及び19歳の少年については「特定少年」と位置付け、①いわゆる「原則逆送」対象事件の拡大(改正少年法62条2項)、②ぐ犯の適用対象からの除外(改正少年法65条1項)、③推知報道禁止の一部解除(改正少年法68条)等を定めた。当会は、これらの点について、立法事実がなく改正の必要性がないだけでなく、少年の健全育成及び更生を図るという現行少年法の理念を大きく後退させるものであることから、
そこで、当会は、本改正に改めて反対の意見を述べるとともに、改正少年法の施行にあたって、国会の法案審議の答弁及び附帯決議の内容を踏まえ、現行少年法の理念を維持し弊害が生じないよう慎重に運用すること及び適切な見直しを求める。
改正少年法の施行及び運用にあたって留意されるべき点
⑴ いわゆる「原則逆送」対象事件の拡大(改正少年法62条2項)
改正少年法が、新たにいわゆる原則逆送の対象とした「短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件」には、強盗罪や放火罪等犯情の幅が極めて広いものがあることから、国会の法案審議の答弁及び参議院法務委員会附帯決議でも指摘されたとおり、家庭裁判所は、従前どおり、要保護性の調査を十分に行ったうえで、犯情の軽重のみならず要保護性についても十分に考慮して逆送の当否を慎重に判断すべきである。
本改正により、改正前であれば保護や教育に重点を置いた少年院で処遇されてきた18歳及び19歳の少年が、刑事裁判により実刑判決を受ければ、処罰を目的とする少年刑務所に一律に収容されることになる。そのような少年は改正前のように少年事件の背景にある虐待やいじめなどの事情を踏まえた少年院によるきめ細かなサポートが受けらないことになり、その結果として、18歳及び19歳の少年に立ち直りの機会が与えられなくなれば、少年の健全育成及び再非行防止の観点から多大な弊害が生じうる。
そして、保護処分は犯情の軽重を考慮して相当の限度を超えない範囲内において決定しなければならないとされた(改正少年法64条1項)が、「犯情の軽重」は、処分の上限を画するものにすぎないことから、家庭裁判所において、その範囲内で、少年の要保護性に応じた適切な処分が選択され、本改正による弊害が生じないように運用することを求める。
さらに、政府に対し、 原則逆送対象事件を拡大したことによる特定少年及び社会への影響について十分な調査を行い、施行5年後の検討(附則第8条)の際には、その立法事実に基づき適切な見直しを行うことを要望する。
⑵ 特定少年をぐ犯の適用対象から除外していること(改正少年法65条1項)
改正少年法では、特定少年は、ぐ犯の適用対象から除外されることとなった。「18歳及び19歳の者の健全育成及び非行防止のためには、早期の段階における働き掛けが有効である」ことは衆議院・参議院各法務委員会附帯決議(以下「両院附帯決議」という。)でも指摘されたとおりであるが、本改正により、ぐ犯の適用対象から外れることで、特定少年に対し、早期に家庭裁判所が介入し、福祉的支援にも繋げ立直りを図るという健全育成及び非行防止のための重要な作用が不可能になるという弊害がある。
そこで、当会としては、政府に対し、問題を抱える18歳及び19歳の者に対する福祉的な支援の充実など、両院附帯決議でも指摘されたとおり上記弊害を防止する手当を即時に取ることを求める。さらに、政府 に対し、特定少年をぐ犯の適用対象から外したことによって生ずる特定少年及び社会への影響について十分な調査を行い、施行5年後の検討の際には、その立法事実に基づき適切な見直しを行うことを要望する。
⑶ 推知報道の禁止の一部解除(改正少年法68条)
推知報道について、両院附帯決議は、この一部解除によって、「特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないことの周知に努める」旨定めている。これは、インターネットが普及した今日において、犯罪歴等の情報が半永久的に閲覧可能となってしまい、罪を犯した者の社会復帰の妨げになっているため、あえて附帯決議がなされたと考えられる。
したがって、報道関係者等に対しては、附帯決議に示された懸念を真摯に受け止めて 、事案の内容と公共性を慎重に考慮して推知報道を行うことが不可欠か否かという基準で判断するよう要望する。
そして、当会としては、 推知報道の禁止を一部解除した改正少年法に反対の意見を表明すると共に、インターネットの普及により一旦推知報道がなされた場合には、少年の将来への影響を完全に除去することは極めて困難であり、弊害が生じることはすでに明らかであることから、政府に対し、 施行5年後の検討を待たずに、立法事実を改めて検討し適切な見直しを行うことを要望する。
結論
改正少年法は、以上のとおり、特定少年に関し、いわゆる「原則逆送」対象事件の範囲を拡大し、「ぐ犯」の適用を除外するとともに推知報道の禁止を一部解除するなどの点で満18歳未満の少年と異なる取扱いを多く規定するなど、少年法1条の健全育成の理念を後退させるものとなった。
当会は、改正を要する立法事実がないにもかかわらず成立した改正少年法に対して改めて反対の意を表すとともに、 改正少年法の運用にかかわる裁判所を始めとする諸機関に対し、各項で述べたとおりの対応を強く求める。
2021年6月8日
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会長
八巻力也
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