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声明・総会決議
最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明
- 中央最低賃金審議会は,この7月中にも,厚生労働大臣に対し,本年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申を行う見込みである。同審議会は,昨年,全国加重平均27円の引上げ(全国加重平均額901円)を答申し,これに基づき各地の地域別最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定され,山梨県においても,最低賃金額が時給810円から837円に引き上げられた。
しかしながら,時給837円という水準は,フルタイム(1日8時間,週40時間,年間52週)で働いたとしても,月収約14万5000円,年収約174万円程度にしかならないものである。最低賃金制度の目的は「労働者の生活の安定,労働力の質的向上」(最低賃金法第1条)にあるが,このような金額では,労働者が経済的に安定した生活を送ることはもちろん,賃金だけで自らの生活を維持していくことすら困難であるといわざるをえない。
そしてさらに,今般の新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言発令とこれに基づく休業要請や外出自粛要請,そしてこれらに起因する景況悪化は,非正規労働者をはじめとする最低賃金額付近の賃金で働く労働者はいうまでもなく,正規雇用による労働者に対してもすでに,極めて深刻な影響を及ぼしつつある。かような状況下,すべての労働者の生活を守るため,最低賃金額のさらなる引上げは喫緊の課題であるといえる。
- 他方,新型コロナウイルスの感染拡大が,労働者を雇用する側の企業の活動にも重大な影響を及ぼしていることは明らかであって,特に,経営基盤の脆弱な中小企業が置かれている現状には極めて厳しいものがあることもまた確かである。
そこで,最低賃金額の引上げによって影響を受ける中小企業に対して,政府は,社会保険料の減免や減税措置のほか,補助金制度等の構築をより積極的に検討すべきである。
- さらに,最低賃金額の地域間格差が依然として大きく,ますます拡大していることも見過ごすことのできない重大な問題である。現に,2019年度(令和元年度)の地域別最低賃金額は,最も高い東京都で時給1013円であるのに対し,山梨県では時給837円にとどまっているのであって,その間には176円もの開きがある。
最低賃金額の高低と人口の転入出には強い相関関係があるとされ,実際に,最低賃金額の低い地方では,賃金がより高い都市部での就労を求めて労働者が流出し,人口減少や労働力不足が深刻化しているほか,地域経済の停滞や地域間格差が固定,拡大している現状が見られる。
こうした現状に加え,今般の感染症拡大により明らかとなった,都市部への一極集中がもたらす様々なリスクの分散を図るためにも,最低賃金額の地域間格差の解消は極めて重要な課題である。
- 当会はこれまで,繰り返し最低賃金額の大幅引上げを求めてきたところであるが,上記のような状況を踏まえ,中央最低賃金審議会に対し,地域別最低賃金額改定の目安の大幅な引上げと全国格差の抜本的な是正を求めるとともに,山梨地方最低賃金審議会に対し,山梨県地域別最低賃金額の大幅な引上げにより,労働者の健康で文化的な生活を確保するとともに,地域経済の健全な発展を促すことを求めるものである。
2020年7月10日
山梨県弁護士会
会長 深澤 勲