２０１８（平成３０）年９月１１日、本年度司法試験の最終合格者数が１，５２５人と発表された。
政府の法曹養成制度改革推進会議は、２０１５（平成２７）年６月、法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ、「司法試験合格者数でいえば、（中略）１，５００人程度は輩出されるよう、必要な取組を進めるべき」としており、本年度の最終合格者数もこの設定目標に近接した人数となっている。
ところで、同取りまとめは、「法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」との留保を付していた点は、重要である。
しかるに、前年度における司法試験受験者数は５，９６７人、最終合格者数は１，５４３人であるのに対し、本年度司法試験受験者数は、５，２３８人（前年度比７２９名減）、最終合格者数は１，５２５人であった（前年度比１８名減）。司法試験合格率でいうと、ここ数年２３％前後で推移していたものが前年度２６％近くに上昇し、本年度はさらに２９％を超えるほどに上昇するに至ったことになる。
本年度の受験者が前年度の受験者と比べて試験の正答能力が突然に上がったものとは考えにくいことからすれば、本年度、司法試験委員会は、合格者数１，５００人程度を確保するために、前年度よりも合格水準を下げたものと評せざるを得ない。
今後も受験者数の減少が止まらず、１，５００名の合格者を維持するなら、合格率はさらに増加し続け、合格水準はさらに下がり続けることになる。これでは、輩出される法曹の人数は、その質の確保を考慮せずに達成されるべきものではないとする推進会議における取りまとめの趣旨に反することとなる。
以上より、当会は、昨年度に引き続き、本年度の司法試験合格判定にさらなる疑念をいだくとともに、政府に対し、法曹の質の確保を十分考慮した、厳格な基準による合否判定の実施を求める。
2018年10月13日
山梨県弁護士会
会長 甲光俊一