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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

犯罪被害者のプライバシー尊重を求める会長声明

 2017(平成29)年10月、神奈川県座間市において、アパートの一室から9名の遺体が発見されるという事件が発生し、その後、匿名による報道を希望していた遺族がいるにもかかわらず、被害者の実名や顔写真に加え、被害者や遺族が公にされることを望まないと思われる情報までもが、テレビ、新聞、雑誌等によって報道されるという事態が続いている。

 犯罪被害者や遺族(以下「被害者等」という。)は、そもそも犯罪行為によって回復不能な被害を受けている。それに加えて、実名等のプライバシーがその意に反して報道されると、被害者等は、その報道によって、さらなる精神的苦痛を受けるのみならず、自宅、学校、勤務先または関係者の居宅が衆目にさらされることにより、日常生活が阻害されるおそれがある。さらに、現代では、インターネットが普及し、ひとたびインターネット上に情報が掲載されると、その情報は拡散されるとともに容易に検索が可能な状態で半永久的に残存することとなり、被害者等が受ける被害は、以前にも増してはるかに大きなものとなるばかりか、その被害回復は極めて困難なものといわざるを得ない。

 もちろん、報道機関の報道する自由は、国民の知る権利に奉仕するものとして最大限に尊重されるべきである。事件の検証や再発防止等のため、事件の本質を明らかにする報道自体は重要である。しかしながら、被害者等には、みだりに個人的な情報を明らかにされないプライバシー権が保障されている。報道の自由も知る権利も、必ずしも被害者等のプライバシー権に優越するものではない。特に、被害者等が匿名による報道を希望している場合には、報道機関は、被害者等に十分に配慮する必要がある。

 以上より、当会は、各報道機関に対し、被害者等の実名等を報道するにあたっては、被害者等の意向を確認したうえ、報道の必要性を十分に検討し、被害者等のプライバシー権を尊重する観点から慎重に判断することを求める。

2018年2月15日

山梨県弁護士会
会長 
堀内寿人