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山梨県弁護士会について

会長あいさつ

会長就任挨拶


山梨県弁護士会 会長 三枝重人

 2024年度の山梨県弁護士会会長に就任いたしました三枝重人です。私は甲府で産湯を使いましたが、育ちは東京、その後は横浜へと40年間都会に住んでいました。その後、私は思うところあって2012年に故郷山梨に戻り、山梨県弁護士会の一員となってからちょうど12年間が経ちました。

 日本も世界もこの12年間、様々な分野で大きな変化がありました。2011年に東日本大震災と原発事故という日本社会を大きく揺るがす出来事がありましたが、その後、大地震や集中豪雨などの自然災害は頻繁に起き続けています。2020年からは世界中がコロナ渦に見舞われ、この数年間は人々が集い、和やかに語り合うという、人間になくてはならない大切な時間を過ごすこともできませんでした。そして今、ウクライナやパレスチナのガザ地区では凄惨な戦争が続き、エネルギーや食糧問題も現実の危機として迫っています。

 その一方、携帯電話はいわゆるガラケーが駆逐されてスマートフォンが急速に普及し、今では一人一台が当たり前となりました。誰もがインターネット上のSNSを利用するようになり、私たちは家に居ながらにして、世界中の情報を瞬時に共有することができるようになりました。また、SDGsという言葉が浸透し、誰一人取り残さない社会を実現していくことが国際目標として掲げられています。一人ひとりの個性を認め合い尊重するという多様性に価値を見出す社会変革や、目を見張る生成AI技術や遺伝子技術の進展によってこれまでの人間観、生命観までも見直しを迫られているのは皆さまご承知のとおりです。

 このように様々な利害が絡み合い複雑化する世界の中で、私たち弁護士は裁判官、検察官とともに法曹の一角を担い、裁判や調停などの職務に携わっておりますが、近年はこれらの伝統的な職務にとどまらず、在野の法曹として、社会の様々な分野で公益活動に携わることが昔以上に多くなってきています。そして、山梨県弁護士会は、一人ひとりの弁護士ではなかなか手に負えない問題に対し、委員会を構成して取り組んでいます。

 例えば、本年も能登半島地震が発生し、石川県を中心として甚大な被害が発生しましたが、南海トラフ地震や首都直下地震、富士山噴火など現実的に予測されている自然災害に備えて、他の士業団体や各自治体とともに大災害に備えた体制づくりを進めています。

 また、高齢の方、障害をお持ちの方、犯罪の被害に遭われた方、貧困にあえいでいる方、性的少数者の方、外国の方、子どもたちなど、いわゆる社会的弱者の方々に手を差しのべるべく、各関係団体と連携して法という光を照らし、その生活がより良きものとなるよう活動を続けています。罪を犯してしまった人についても、その背景にある不幸な境遇や社会的孤立などを把握し、再犯に及ぶことなく社会の一員として再び戻ってきてもらえるように、各支援団体とのネットワーク作りを進めています。

 さらに、当会は、弁護士業務の改革、新規分野への取組みも進めており、中小企業や小規模事業者のスタートアップ支援や事業承継、民事信託やホームロイヤー制度などの普及活動にも尽力しています。

 その他、当会は、憲法や死刑廃止など、社会のあり方に重大な影響を与える問題について情報や意見を発信しています。昨年亡くなられた音楽家の坂本龍一さんは生前、「声を上げる。上げ続ける。あきらめないで、がっかりしないで、根気よく。社会を変えるには結局、それしかないのだと思います。」という言葉を残しています。当会は、人権、自由、平和、環境といった全ての人々が享受すべき価値を守り、次の世代に引き継いでいくために、これらの難しい問題についても研究を続けています。

 私は、コロナ渦以降、社会が必要以上に分断されてきているのではないかと懸念しています。当会が努々「社会の孤島」となることのないよう、副会長の八巻佐知子会員、秋山真里亜会員、中村光太郎会員と力を合わせて、様々な団体や市民の方々と交流し、弁護士会としてできること、すべきことを一つ一つ積み重ねて、社会とつながっていきたいと思います。