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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

貸金業法の規制緩和に反対する会長声明

 上限金利の引下げ及び収入の3分の1以上の貸付の禁止(総量規制)等を規定した現行貸金業法が完全施行されてから、4年あまりが経過した。
 現行貸金業法は、自己破産や自殺の急増など深刻な社会問題であった多重債務問題を解決すべく、平成18年12月、自民党政権下において与野党一致で成立し、平成22年6月18日、完全施行されたものである。
 それにより、法改正時からこれまでの間に、5社以上の借入れを有する多重債務者が約230万人から約18万人に、自己破産者(自然人)は約17万人から約8万人に、いずれも激減している。また、多重債務による自殺者は法改正時の1973人から688人に大幅に減少した。全体の自殺者は、2012年には15年ぶりに3万人を割り、2013年も2万7283人となっており、多重債務対策は自殺対策としても機能していると評価されている。このように、貸金業法の改正によって、多重債務問題が大きく改善していることは明らかである。
 しかるに、平成26年6月28日付時事通信の報道によると、自民党において、銀行融資を受けにくい中小零細企業や個人事業主が一時的な資金を消費者金融から借りにくくなっているとの判断を根拠として、一定の条件を満たす貸金業者を「認可貸金業者」と認定した上で、認可貸金業者に限って、上限金利を29.2%まで引き上げ、総量規制からも除外するという貸金業法の改正案が検討され、今秋の臨時国会への提出が目指されているとのことである。
 しかしながら、現行貸金業法の成立前、年29.2%もの高金利により分割返済金の大部分が利息に充当されて元本の返済が進まず、返済のための借入が繰り返されたり、客観的に返済可能な金額を大きく上回る過剰融資が繰り返されたりしたことにより、返済不能となって自己破産や自殺に追い込まれる者が多数存在したことは周知のとおりである。中小零細企業や個人事業主にとって必要なのは、破綻の恐れが大きい高金利の貸し付けではなく、生活や事業を破綻させない低金利の融資制度を拡充することである。高金利の現行貸金業法の規制を緩和し、かつての高金利・過剰融資を許容することは、再び深刻な多重債務問題を招来するものであり到底許されない。
 当会は、現行貸金業法の成立・完全施行の実現に取り組むとともに、多重債務の無料相談を継続的に実施するなど、多重債務問題の解決に向けて努力してきたものであり、高金利の復活と過剰融資を許容する貸金業法の規制緩和には断固反対する。

2014年8月2日

山梨県弁護士会
会長 
小野 正毅