福田康夫内閣総理大臣は、本年4月23日、消費者行政推進会議において、6つの基本方針と守るべき3原則を明らかにした。その内容は、消費者庁(仮 称)を来年度に発足させること、そのために必要な予算・法律案の準備を進めること等を明確にするものであり、山梨県弁護士会は、この点を高く評価する。
しかし、消費者主役の実効性ある制度のために、以下のとおり、さらなる制度の充実・発展を図る必要がある。
当会は、これまでもクレジット・サラ金に関する相談を無料としたほか、当会消費者問題対策委員会を中心に、山梨県県民生活センターに相談員を派遣するなど行政機関と協力して、消費者被害の救済に取り組んできた。
その経験からも、消費者の権利擁護の理念の下で、消費者を被害から守るためには、被害相談窓口の充実、被害の早期発見、被害情報の集約によって、事件の解決や被害の拡大の防止などのための迅速な対応がなされることが不可欠と考える。
ところが、内閣府の調査によれば、全国の相談件数は増えているにもかかわらず、地方自治体の消費者行政予算は、年々削減されており、十分な相談体制を取れないなどの弊害が生じている。
このような中で、たとえ消費者庁が設立されたとしても、消費者保護のための人的・物的体制を十分に確保しなければ、近年の地方消費者行政をみれば明らかなように、その組織は機能しなくなってしまう。
他方、近年においても、マルチ商法による大規模な被害事件、障がい者を狙った出資詐欺、英会話教室NOVAの解約清算金に関する事件、食品偽装事件など、高齢者、障がい者などの社会的弱者だけではなく、その他の市民にも多数被害が及んでいる。
それゆえ、全国的で一元的な情報の収集と調査分析を行い、消費者主役の視点で早期に解決ないし防止する十分な権限を有した消費者行政や体制を整えることも、急務である。
したがって、当会は、消費者庁が単に創設されるにとどまらず、下記の事項が実現するよう消費者庁に強い権限が付与されること、そのために新たな立法と関係法の移管をすることを求める。
記
2008年6月7日
山梨県弁護士会
会長 石川 善一