本年2月の山梨県による生活保護世帯の実態調査により、冷暖房の使用を制限した世帯、1日2回以上食事をしていない世帯、入浴・シャワーの制限をした世帯が、令和4年7月の調査よりもいずれも増加しており、物価高騰の影響等により生活保護世帯の食事・衛生・健康環境が悪化していることが浮き彫りとなった。日本の生活保護が低い補足率にとどまっていることを考慮すれば、生活保護世帯以外の生活困窮世帯においても同様の傾向が強まっていることが推測される。実際に、生活困窮者世帯において、盛夏時にエアコンを適切に使えずに健康を損ない、救急搬送までされている事例が支援団体の調査によって示されている。
本年も6月から県内各地で猛暑日が続き、気象庁によれば10月まで暑さが続くと見込まれている。そのため、生活保護世帯及び生活困窮世帯においては、エアコンの使用控えや食費の不足による健康被害が生じるおそれがある。
このような現状に対し、県は、「県として可能な範囲で最大限の努力を尽くす」姿勢で対策にあたり、まず、生活困窮世帯の小中高生への夏休み期間中の食料支援の実施を決定した。また、生活困窮世帯への食糧支援についてはコーディネータ―が配置されることになり、ひとり親家庭を中心として、生活困窮世帯に就労支援が行われることになった。
今回の県の迅速な支援は高く評価されるべきである。もっとも、これらの支援には住民税非課税世帯の大多数を占める高齢者世帯への支援や、高騰する光熱費の直接的な支援などは含まれていない。上記のような県内の現状を踏まえるとより一層の支援がのぞまれるところである。
一方、食糧費、燃料費の高騰に対応して、内閣府は物価高騰支援対応重点支援地方創生臨時交付金(重点支援地方交付金)を準備しており、同交付金による推奨事業メニューとしては、エネルギー・食料品価格等の物価高騰に伴う低所得世帯支援が挙げられている。そして、同交付金は、本年5月に1000億円の予備費が「地域の実情に合わせて必要な支援を決め細やかに実施できるよう」追加計上され、山梨県の交付限度額は6億円である。
全国の多数の自治体においては、同交付金を活用し、燃料券の交付、LPガス料金の補助、水道料金減免、お米券配布などの具体的な食糧・燃料支援策が次々と実行されている。
上記のとおり猛暑が長期間続くことが予想されることを考慮すれば、他の自治体の支援実施状況を参考にしつつ、盛夏時の光熱費の軽減を含む、より一層の生活支援を実行し、生活保護世帯・生活困窮世帯の現状を改善することが必要である。
そこで、当会は、山梨県に対し、同交付金を活用するなどして、生活保護世帯・生活困窮世帯の方が命の危険にさらされることがないように、より一層の生活支援対策をとることを求める。
2025年8月8日
山梨県弁護士会
会長 大西達也