令和5年における全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は、前年及び前々年よりも増加して約90.9万件に上り、被害額・トラブル額は、過去最高の約8.8兆円と推計されている。また、令和5年度に山梨県内の消費生活センターに寄せられた相談件数も前年度から330件増加し、7732件であった。
自治体全体における広義の消費者行政予算は、令和元年度以降増加しており、特に消費生活相談員にかかる人件費の動向を見ても、令和元年度以降は増加傾向にある。また、自治体による自主財源の負担割合は増加傾向にある。このような状況下で、全国的に、消費生活相談員の待遇改善の必要性も指摘されている。しかしながら、現行の地方消費者行政強化交付金のうち、消費生活相談員の人件費を補助してきた地方消費者行政推進事業の活用期間は、全国的に活用期限が迫っており、令和9年度ですべて終了する予定である。
国による財源的支援がなくなれば、自治体の自主財源による負担が増加し、限られた予算のもとでの人材確保は、ますます難しくなることが想定される。このような状況では、消費生活相談員の減員や相談日・相談時間の削減を避けられず、地方における消費者被害の件数や被害額がますます増加することが懸念される。したがって、国は、地方消費者行政の安定的な確保と待遇改善にかかる恒久的な予算措置、及び、消費生活相談員に係る人件費の支援を継続すべきである。
また、消費者庁は、現行のPIO-NETを刷新し、消費生活相談のDX化など新システムへの移行を計画しているところ、その費用のうち新システムにおけるパソコン設備費用を自治体に全額負担するよう求めているとのことである。
しかし、消費者被害の回復や防止という目的を達成するためには、相談業務や相談情報の登録業務等が安定して行われることが極めて重要であり、パソコン設備を含む物的体制が整っていなければ新システムへの移行は骨抜きになりかねない。上記のとおり消費生活相談員の待遇や人材確保に不安材料があることや現状のPIO-NETの端末に関する費用を国が負担してきたことも踏まえ、新システム移行に伴うパソコン設備費用も国が負担すべきである。
よって、当会は、国に対し、地方自治体の財政事情によることなく、地方消費者行政を安定的に推進するための恒久的な財源を措置し、消費生活相談員の安定的な確保と待遇改善にかかる制度設計を行い、そのために必要な予算措置を講じること、及び、国が進める消費生活相談のデジタル化(PIO-NETの刷新)にかかる予算を国の責任で措置することを要請する。
2025年3月7日
山梨県弁護士会
会長 三枝重人