SNSやマッチングアプリで出会った相手と親しい関係となった後に「将来のため」等の理由で投資を持ち掛けられ、様々な名目で金銭の支払いを要求される等した後、最終的に相手や投資サイトと連絡が取れなくなり出資金が回収できなくなるという、いわゆる国際ロマンス詐欺の被害が急増しています。
近時、詐欺の手口は多様化しており、国際ロマンス詐欺の手口以外にも、投資話や副業話を持ちかけ、最初は期待した通りの金員を支払い信用させつつ、その後、違約金や手数料などと色々と理由をつけては、金員をだまし取るという類型の手口も急増しているようです。
このような詐欺案件を取り扱うとするウェブ上の弁護士業務広告の中には、以下の通り、弁護士法、弁護士職務基本規程(以下、「基本規程」といいます。)、または弁護士の業務広告に関する規程(以下、「広告規程」といいます。)に違反するおそれのあるものが散見されます。
最近、関東弁護士会連合会の各弁護士会の市民相談窓口において、投資や副業、国際ロマンス詐欺に代表される詐欺案件に関する相談が数多く寄せられていることが報告されており、他会においても同種の相談が急増しています。相談の一例としては、以下のとおりです。
投資や副業、国際ロマンス詐欺に代表される詐欺案件には、次のような際立った特徴があります。
詐欺被害に気づき、慌てて検索した法律事務所のホームページ上で、あたかも回収可能性が高いことを謳った広告をみれば、藁をもすがるおもいで、その広告を掲載している弁護士に相談をされることと思います。
しかし、弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければなりません(日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程29条1項)。また、弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはなりません(同条3項)。
そのため、投資や副業、国際ロマンス詐欺に代表される詐欺案件の被害に遭われ、被害の回復を弁護士に依頼する方は、依頼する予定の弁護士から、事件処理の進め方、被害回復の可能性を含めた見通し、これらを踏まえた着手金・報酬金の妥当性について十分な説明を受けた上で依頼の検討をいただくよう、お願いいたします。
特に、深夜に相談をして、すぐに電子契約のうえ弁護士に依頼することを勧められた場合には、一旦冷静になってお考えいただくことを、強くおすすめします。
以 上
<参考条文>
弁護士法
(法律事務所)
第二十条 弁護士の事務所は、法律事務所と称する。
二 法律事務所は、その弁護士の所属弁護士会の地域内に設けなければならない。
三 弁護士は、いかなる名義をもつてしても、二箇以上の法律事務所を設けることができない。但し、他の弁護士の法律事務所において執務することを妨げない。
(非弁護士との提携の禁止)
第二十七条 弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
日弁連 弁護士職務基本規程
(事務職員等の指導監督)
第十九条 弁護士は、事務職員、司法修習生その他の自らの職務に関与させた者が、その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければならない。
日弁連 弁護士の業務広告に関する規程
(禁止される広告)
第三条 弁護士等は、次に掲げる広告をすることができない。
一 事実に合致していない広告
二 誤導又は誤認のおそれのある広告
三 誇大又は過度な期待を抱かせる広告
2024年7月30日