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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

旧優生保護法違憲大法廷判決に対する会長声明

 7月3日、最高裁判所大法廷(戸倉三郎裁判長)は、旧優生保護法により強制不妊手術を受けた被害者に対して国に損害賠償金の支払いを命じる判決を言い渡しました。

 国はこれまで、手術は法律に基づき実施されたもので、国に法的責任は生じないと主張してきました。これに対して判決は、旧優生保護法により不妊手術を行うことは個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反し、「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を保障する憲法13条に反するとしました。また、特定の障害を有する者等を同法による不妊手術の対象者と定めてそれ以外の者と区別することは、合理的な根拠に基づかない差別的扱いにあたるとして、憲法14条1項に違反するとしました。

 さらに、国は手術を受けてから、除斥期間の20年以上が経過した裁判であり、責任はなくなったと争ってきました。これに対して判決は、強制不妊手術を実施させた責任が20年で消滅したとすることは、著しく正義・公平の理念に反し到底容認することができず、国の主張は信義則に反し又は権利の濫用として許されないとして、国の主張を認めませんでした。

 旧優生保護法により、障害のある人に対して、強制不妊手術が約2万5000件実施されました。しかし、今回の判決は、被害を受けた多くの人びとのうち、たった11名について出されたものです。

旧優生保護法により、多数の者が不妊手術を受け、生殖能力の喪失という重大な被害を生じており、国の責任は極めて重大です。また、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「一時金支給法」という。)による一時金320万円は、国の損害賠償責任を前提としない極めて不十分な補償です。

 そこで、当会は、本判決により国が旧優生保護法の被害者に対して賠償金の支払義務を負うことが明らかになったこと、本判決の三浦補足意見が被害者の高齢化等の事情から全面的な解決の早期実現の必要性を指摘していることを踏まえ、すべての被害者を救済するため、次の2点の実施を国に求めます。

  1.  旧優生保護法が違憲であったことを一時金支給法の法文に明記し、国が被害者に損害賠償責任を負うものとして、人工妊娠中絶を受けた者及び優生手術を受けた者の配偶者を含め、全ての被害者に対して被害を補うに足りる補償金を支払うこと。
  2.  旧優生保護法によりもたらされた優生思想に基づく差別をなくし、一人一人が等しくかけがえのない個人として尊重し合うことができる社会を実現するために、①第三者機関を設置して真相究明のための検証を行い、再発防止のための措置を実施すること、②学校教育及び社会教育の場において、差別偏見の解消に向けた人権教育及び啓発活動の継続的な取り組みを行うこと、③障害等の有無によらず、誰もが自由な意思によって自らの生き方を決定することができるよう、子育て支援を含む生活支援の充実等の積極的な措置を講ずること。

 当会は、人権擁護と社会正義を実現する弁護士の団体として、全ての優生手術による被害者の損害の補償及び障害者等に対する偏見差別の解消に向けて、引き続き活動をいたします。

 

2024年7月8日

山梨県弁護士会
会長 
三枝重人