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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明

  1.  2021年、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、最低賃金引上げ額の目安を全国一律28円とすることを答申し、山梨地方最低賃金審議会において最低賃金は838円から866円に引き上げる答申がなされ、決定された。
  2.  最低賃金法は、地域別最低賃金について、「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定められなければならない」(最低賃金法第9条第2項)とし、「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」(同法第9条第3項)としている。
     しかし、時給866円、月平均174時間(週休2日、1日8時間)働いたとしても、月収で15万円程度、年収で180万円程度にしかならない。この金額では、単身の労働者でも山梨県内で「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ことは困難である。
     働いても貧困から抜け出せない労働者が多数存在する現状において、「健康で文化的な最低限度の生活」を賃金収入によって営むことができるよう、最低賃金の大幅な引上げが必要である。コロナ禍の影響や、ロシアのウクライナ侵攻の影響等による、継続的な生活関連品の価格高騰に対応するためにも、迅速な引き上げが強く求められている。
  3.  また、最低賃金の地域間格差は依然として縮まっていない。最低賃金が最も高い東京都(1041円)と山梨県では175円もの開きがあり、全国加重平均額(930円)と比較してもその差は64円に上る。
     最低賃金額の高低と人口の転入出には強い相関関係があるとされている。
     実際に、最低賃金の低い地方から、賃金がより高い都市部での就労を求めて労働者が流出し、人口減少や労働力不足が深刻化し、地域経済の停滞につながっている。
     2021年に全地域一律の目安額を示したものの、従前、中央最低賃金審議会は、全国をA〜Dの4つに区分し、それぞれの引上げ額の目安に差異を設けていた。
     現在、中央最低賃金審議会において目安制度の在り方に関する全員協議会が設置され、2023年3月をめどに報告がまとめられる予定であるが、目安制度が地域間格差をもたらしてきたことを直視し、地域間格差を解消していくために、目安制度そのもの抜本的な改革を検討すべきである。
  4.  最低賃金の大幅な引き上げにより地域経済が活性化すれば、コロナ禍に苦しむ地域経済を立て直す効果が期待できる。一方、地域経済の主役である中小企業が最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるよう、社会保険料の事業主負担の免除・軽減、企業間の公正な取引の確保、補助金支給等、各種施策を講じるべきである。
  5.  よって、当会は、中央最低賃金審議会に対して、地域別最低賃金額改定の目安の大幅引上げと全国格差の是正を求め、併せて、山梨地方最低賃金審議会に対し、山梨県地域別最低賃金額の大幅な引上げにより、労働者の健康で文化的な生活を確保し、地域経済の健全な発展を促すことを求める。
     さらに、国及び山梨県に対して、最低賃金の引上げと併せて、最低賃金の引上げにより影響を受ける中小企業への十分な支援策を講じることを求める。

2022年7月8日

山梨県弁護士会
会長 
石川 恵