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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

改めて改正少年法の慎重な運用を求めるとともに少年事件の報道等に配慮を求める会長声明

 2022年4月1日、18歳・19歳の若年者を「特定少年」とする改正少年法が施行された。
 改正少年法では、18歳・19歳の若年者は成長発達段階にあり、可塑性を有することから、成年年齢引下げがあっても、基本的には引き続き少年法を適用することとしている。
 この点、改正少年法が国会審議の結果、①特定少年を引き続き少年法の適用対象とした本改正の趣旨を徹底した運用をすること(参議院)、②インターネットでの掲載により情報が半永久的に閲覧可能となることも踏まえ、推知報道については少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないこと(衆参両院)、③事件広報に当たっては、被害者及びその家族・遺族の名誉又は生活の平穏が害されることのないよう十分配慮されなければならないこと(衆参両院)などが指摘されている(以下、まとめて「附帯決議」という。)。
 しかし、改正少年法施行前から、これら改正少年法の趣旨に反する運用を示唆する議論がなされているとともに、少年事件の報道やインターネット上の書込みが過熱し、これに付随して少年だけでなく、被害者や被害者家族、関係者のプライバシーや生活の平穏が侵害されたり、学校が特定されることで教育現場が混乱し教育を受ける権利が侵害されたりという憂慮すべき事態が続いている。
 そして、同法施行による特定少年の推知報道の一部解除に伴い、よりこれらの事態が深刻化することが懸念される。
 被害者及び被害者家族は、犯罪行為によって回復不能な被害を受けており、そのプライバシーがその意に反して報道される、触れたくない事件情報に触れる、過熱したインターネット上の書込みを目にすること等によって、二次被害を受けることは絶対に避けるべきである。また、少年事件では、関係者には未成年者や若年者が多いところ、被害者や被疑者どちらの関係者も、事件により傷つき混乱している可能性が高く、報道や取材により、再度傷つく危険性が大きいことへの配慮が必要である。
 そこで、改正少年法の施行にあたり、改めて以下のとおり求める。

1 改正少年法の慎重な運用について
(1)少年法の趣旨の徹底
 附帯決議に示されたとおり、改正少年法の適用にあたり、特定少年を引き続き少年法の適用対象とした本改正の趣旨を踏まえ、少年法が掲げる健全育成の目的及び理念に合致した運用を求める。特に、拡大された原則逆送の対象事件にあっては、犯情の重さを理由として安易に逆送することなく、特定少年の家庭環境や成育歴、資質や性格などを調査の上、少年法上の保護処分によって更生を図ることができるか慎重に考慮して判断されるよう求める。
(2)特定少年に関する事件広報への配慮
 当会は、改正少年法第68条の新設に関しては、従前から反対していたが、推知報道による悪影響が生じている実情等に鑑み、改めて削除することを求める。
 また、削除されるまでの間、裁判所及び検察庁において、特定少年に関する事件広報を行う際には、少年事件が大きく報道されるという可能性やインターネットへの情報掲載の影響を十分に考慮し、少年の更生の妨げとならないよう慎重な判断をされるよう求める。
 さらに、報道関係者等に対しては、附帯決議に示された懸念を真摯に受け止め、事案の内容と公共性を考慮し、推知報道を行うことが不可欠か否かという観点から、極めて慎重に判断されるよう要望する。また、事件の内容や少年の家族関係・経歴等の報道について、行き過ぎた社会的制裁となり、少年の更生の妨げとなることのないよう配慮を求める。

2 少年事件の報道・取材・表現に関する配慮について
 少年事件に関する報道・取材・表現が過熱することによって、被害者や被害者家族、関係者のプライバシーや生活の平穏が害されるべきではなく、特に、事件報道においても、被害者の心情への配慮が必要なことは、附帯決議でも指摘されたとおりである。
 よって、報道関係者等だけでなく、すべての人に対し、被害者や被害者家族、関係者の心情や平穏な生活に十分に配慮し、プライバシー及び教育を受ける権利を尊重するよう求める。

2022年4月8日

山梨県弁護士会
会長 
石川 恵