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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

死刑執行に強く抗議し,直ちに死刑執行の停止を求める会長声明

  1.  当会は,2020年3月31日,「国会に対して最高刑のあり方に関する議論を求めるとともに,その結論が出るまでの間全ての死刑執行の停止を求める会長声明」を発出したところであるが,2021年12月21日,東京拘置所及び大阪拘置所において3名の死刑が執行された。その中には再審を請求していた死刑囚も含まれている。
  2.  犯罪によって奪われた生命を戻すことは不可能であることから,犯罪の被害者遺族が厳罰を望む処罰感情は自然な心情であり,加害者に対して死をもって償うことを求めたいという気持ちも十分に理解できるところである。
     他方で,人の生命に究極的な価値を認め,その生命を奪う権利は何者も有しないとの普遍的な命題を根拠にすれば,死刑制度がこの普遍的な命題と矛盾することは明らかである。また,刑事司法制度の運用は人間が行う以上,誤判の危険性を完全に排除することができないし,誤判により生命を奪われる事態が1人でも生じてしまえば,決して取り返しがつかないこともまた明らかである。実際にも日本では4人の死刑確定事件について再審で無罪が確定している。再審を請求している死刑囚に対しての死刑執行は,憲法上要請される適正手続保障の下での裁判を受ける権利を保障する観点からも,特に慎重になされるべきである。
  3.  2020年1月17日に死刑制度に対する意識調査を含む「基本的制度に関する世論調査」の結果が公表され,「死刑もやむを得ない」と回答した方は80.8%であった。しかし,「死刑もやむを得ない」と回答した80.8%の方に対する追加質問において,うち39.9%の方が「状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよい」と回答していることが明らかとなっている。「死刑は廃止すべきである」との回答を含めると,「将来的にも死刑を廃止してもよい」との回答は,全体の41.3%となる。一方で,この追加質問において,「将来も死刑を廃止しない」と回答した方は54.4%であったから,「現在も将来的にも死刑は廃止すべきではない」との意見の方は,全体の44.0%であったことになる。このように,死刑制度の存廃に関する国民世論は,将来的な廃止の可否という点では,おおよそ拮抗している。
     加えて,この「現在も将来的にも死刑は廃止すべきではない」という44.0%の方の中に,仮釈放のない終身刑が導入された場合には「死刑を廃止する方がよい」と回答した方が20.5%存在したことも明らかとなっている。その結果,死刑制度の存廃について仮釈放のない終身刑が導入された場合は「死刑を廃止する方がよい」という回答は,全回答者の35.1%に上っている。 
  4.  アムネスティ・インターナショナルによれば,2020年12月末日時点で,全ての犯罪に対して死刑を廃止している国は108か国,通常犯罪について死刑を廃止している国は8か国,10年以上死刑が執行されていない国は28か国あり,これらの国の合計は144か国であり,世界の国々の3分の2以上を占めている。これに対して,2020年に死刑を執行した国は,18か国にとどまっている。また,日本を含む先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(37か国)のうち,死刑を国家として統一して執行しているのは,日本だけという状況になっている。このように,国際社会の潮流は死刑廃止に向かっているし,国連の自由権規約委員会,拷問禁止委員会及び人権理事会は,断続的に死刑を執行する日本に対し,いったん死刑執行を停止し,死刑廃止を前向きに検討すべきであるとの勧告を出し続けているところである。
  5.  以上のとおりの国際社会の状況,さらには国民意識などを踏まえた場合,我が国においても,すでに死刑制度の存廃に関して国民的な議論を行うべき時期に至っているというべきである。
     当会は,このような状況の中で行われた2021年12月21日の死刑執行に対して強く抗議をするとともに,あらためて,国会に対し,国民とともにかかる議論を行うことを求め,その結論が出るまでの間,立法により全ての死刑執行を停止するよう求めるものである。

2021年12月21日

山梨県弁護士会
会長 
八巻力也