2018(平成30)年度の法科大学院志願者数は延べ8,058名(前年度比101名減),同入学者数は1,621名(同83名減),司法試験出願者数は5,811名(同905名減),同受験者数は5,238名(同729名減)にまで落ち込んでいる。ピーク時には,法科大学院志願者数が延べ72,800名(2004(平成16)年度),司法試験出願者数が11,891名(2011(平成23)年度)であったことを考えると,法曹志願者の急減に歯止めがかかっていない状況である。
政府の法曹養成制度改革推進会議は,2015(平成27)年6月,法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ,「司法試験合格者数でいえば,(中略)1,500人程度は輩出されるよう,必要な取組を進め」るべきとしており,昨年度の最終合格者数1,543名も,この設定目標に近接した人数となっている。
ところで,同取りまとめには,「法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み,輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」との留保が付されている点は,重要である。
本年度のように受験者数の減少が止まらない中,1,500名の合格者数を維持するなら,合格率は増加し続け,合格水準は下がり続けることになる。
合格率でいえば,2016(平成28)年度までの合格率は23%前後であったが,2017(平成29)年度の合格率は26%弱と上昇しており,2018(平成30)年度の受験者数5,238名についても,合格者数1,500名が維持されたならば,合格率は28%を超えることになる。
合格水準でいえば,2016(平成28)年度は,受験生平均点約830点に対して合格水準点は880点であったが,2017(平成29)年度は,受験生平均点約780点に対して合格水準点が800点となっており,受験生平均点と合格水準点との差が30点も縮まっている。
今後,受験者数の減少が止まらない中でも,1,500名の合格者数を維持するならば,合格率は増加し続け,合格水準は下がり続けることになり,これでは,「輩出される法曹の人数は,その質の確保を考慮せずに達成されるべきものではない」とする上記推進会議における取りまとめの趣旨に反することになる。
以上より,当会は,政府及び司法試験委員会に対し,2018(平成30)年度司法試験の合格判定にあたって,法曹の質の確保を十分考慮した,厳格な基準による合否判定の実施を求める。
2018年8月9日
山梨県弁護士会
会長 甲光俊一