政府の法曹養成制度改革推進会議は、2015(平成27)年6月、法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ、「司法試験合格者数でいえば、(中略)1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進めるべき」としており、本年度の最終合格者数もこの設定目標に近接した人数となっている。
ところで、同取りまとめは、「法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」との留保を付していた点は、重要である。
また、前年度は受験生平均点約830点に対し、合格水準点は880点であったが、本年度は受験生平均点約780点に対し、合格水準点は800点であり、受験生平均点と合格水準点との差が30点も縮まっている。
本年度の受験者が前年度の受験者と比べて試験の正答能力が急に上がったものとは考えにくいことからすれば、本年度、司法試験委員会は、合格者数1500人程度を確保するために、前年度よりも合格水準を下げたものと評さざるを得ない。
今後も受験者数の減少が止まらず、1500名の合格者を維持するなら、合格率は増加し続け、合格水準は下がり続けることになる。これでは、輩出される法曹の人数は、その質の確保を考慮せずに達成されるべきものではないとする推進会議における取りまとめの趣旨に反することとなる。
2017年12月9日
山梨県弁護士会
会長 堀内寿人